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『灼熱の熱闘・熊谷。日体大は6位スタート「All Outも、まだまだ、これから」』

  • nittaidai
  • 6月25日
  • 読了時間: 9分

まっちゃん部長日記@太陽生命女子セブンズ熊谷大会


 ◆古賀監督「選手はハダで感じることができた」

 

 酷暑、猛暑、炎暑。もう暑くて、暑くて。7人制女子ラグビーの年間王者を決める太陽生命ウイメンズセブンズシリーズの第1戦、熊谷大会が6月21日、22日、灼熱の埼玉・熊谷ラグビー場であった。選手にとっては、フライパンの上でプレーしているような暑さだっただろう。

 「暑かったですね」。6位スタートとなった日体大の古賀千尋監督はそう、声を絞り出した。空調の効いた部屋の冷たい壁に火照ったほおを付け、サバサバした口調で続けた。

 「大会を通じて、(シニアの強さを)ハダで感じることができました。どのくらいのプレーの質でやらないといけないのか、どのくらいのスピードでやらないといけないのか。学生がそれを体験できたことは収穫ですね」

 それにしても暑かった。暑過ぎた。古賀監督は「異常気象でしょうね、これ」と漏らした。この暑さの中、よく選手はがんばった。でかくて強いシニアチームにチャレンジし続けた。今年のチームスローガンが『All Out。やるか、やるか。』である。ふだんの練習で積み重ねてきたことに自信を持って、全てを出し切る。やり切るしかないとの意。

 「学生はオールアウトしましたか?」と聞けば、監督は明るく言い放った。

 「そりゃオールアウトはしていたでしょう。ふらふらになるまでやっていたので。十分していたと思いますよ、みんな」

 そして、言葉に自信を込めた。

 「次の北九州大会まで一ヶ月。そこまでに、すべての質を一段階、二段階、三段階レベルアップしていければいい。スピードアップもですね。質とスピードというところが今後のカギだと思います」

 

 ◆最後のグランドファイナル札幌大会で総合順位を決定

 

 このセブンズシリーズの開催時期とフォーマットは今年、大きく変わった。開催時期が第1戦は昨年より2カ月半遅くなり、最終第4戦がグランドファイナル札幌大会緯として8月17日に実施されることになった。結果、猛暑下の試合が多くなる。正直言って、選手ファーストではなかろう。

 フォーマットは、昨年の4大会の通算ポイントで総合順位を決める方式ではなく、ことしは最終第4戦をグランドファイナルとして、そこで総合順位決定トーナメントを行うことになった。第3戦までのポイントの合計数の上位8チームが札幌大会で総合順位決定トーナメントに進むことになる。つまり、上位8チームに食い込めば、札幌大会での優勝のチャンスは残ることになる。チーム力が急速にアップしていくだろう日体大にとっては有利な変更と言っていい。

 

 ◆37度。炎天下の5位決定戦。髙橋夢来が70㍍好走、谷山がトライ!

 

 ゲッ。陽射しが直撃する観客席でスマホの温度計を見れば、なんと「37度」となっていた。最終日の22日、日体大としては2日間で6試合目のファイナルマッチ、5位決定戦。すぐそばに陣取る日体大のノンメンバーや保護者たちの大声がグラウンドに降り注ぐ。

 「ニッタイダイ、ニッタイダイ、ニッタイダイ!」

 遠く離れた左側の観客席からは、黄色いYOKOHAMA TKMのTシャツを着た応援団のメガホンをたたく音が聞こえてくる。

 「ティーケーエム! ティーケーエム」

 うだる暑さの中、午後2時44分、キックオフ。

 TKMの主軸のフィジー代表、アカニシ・ソコイワサが何度も爆走する。でも、“ねえさん”ことOGの日本代表、堤ほの花(ディックソリューションエンジニアリング)らがしつこいタックルで前進を阻む。教育実習から戻った高橋夏未、ゲームキャプテンの持田音帆莉(ねおり)、闘志の塊の髙橋夢来(ゆらら)、そして日本代表の谷山三菜子がボールをうまくつないで反撃する。互角の展開が続く。

 前半4分過ぎ。自陣でスクラムから連続攻撃をされ、タックルポイントの右サイドを日体大OGの人羅美帆に突かれて先制トライを許した。

 日体大がすぐに反撃。自陣からボールをつなぎ、髙橋夢来が70メートル近くを好走した。ナイスラン! ゴールライン手前でソコイワサにボールを奪取されたが、その外国人選手に持田がナイスタックル。こぼれたボールを髙橋夢来が好捕し、内側にフォローした谷山にパス、そのまま右中間に走り込んだ。ゴールは決まらず、5-7で折り返した。

 

◆ハーフタイム「最後に勝つのはニッタイダイ」との檄も

 

 たった2分間のハーフタイム。

 グラウンドの日体大の円陣の上にはスカイブルーのでっかい日傘が差された。直径2.6メートル。ことしの夏の暑さ対策として古賀監督が購入した「チーさんのビッグパラソル」だった。選手たちは冷たい水やタオルでリフレッシュ。古賀監督はこう、檄を飛ばした。

「最後に勝つのはニッタイダイだよ」


 

◆日体らしいつなぎで1年生の藤原郁がトライ!

 

 後半、日体大はキックオフから攻めた。1分過ぎだった。マイボールのスクラムを押されながらも、SH役の高橋夏未がこぼれたボールをうまく拾い前に出た。谷山から髙橋夢来が鋭利するどいランでつないでいく。タックルを受けると、ボールを生かし、谷山から左にフォローした1年生の藤原郁(かおる=京都成章高)が左ライン際を脱兎のごとく走りきった。10-7と逆転した。

 だが、直後、持田のタックルをパワフルな走りで引きちぎったソコイワサが大幅ゲインし、これまた日体大OGの堀川侑愛が逆転トライをマークした。悔しいけれど、日体大OGはあちらこちらでがんばっているのだ。

 10-14でノーサイド。後半途中に交代出場した水野小暖(こはる)は言った。

「チーさんの言葉を信じて、勝つしかないと思ってプレーしました。勝てなかったけれど、私たちはここからぐんと成長します、絶対に」

 

◆円熟の堤ほの花「全然やれている部分はあった」

 

 この日の太陽のように明るい堤ほの花はいつだって元気だ。19日に28歳になったばかりだった。「暑過ぎました」と素っ頓狂な声を出した。

 「しかも最終戦が一番暑いからしんどかったですね」

 小柄でも、やはり堤がいると、チームに安定感が加わる。チーム力が一段、アップする。経験だろう、言葉には自信があふれている。

 「パワーでも、全然、やれている部分はあったんで。修正すれば、全然勝てる相手が増えてくるんじゃないかと思います。まあ、差があるチームもありましたけど、まだ先もあるので、がんばっていけば、もっとやれると思います」

 それにしても、タックルがいいですね、と声を掛ければ、パッと笑顔になった。

 「ありがとうございま~す。ディフェンスは自分の得意分野ですから。アタックも上手になりま~す」

 なんと表現すればいいのか。自然と周囲の空気を明るくするのだった。

 

◆準々決勝ではパ―ルズに一矢報いる。北海道バーバリアンズには快勝。

 

 一日目のプール戦は自衛隊体育学校PTS、横河武蔵野Artemi-Starsに連勝したが、3戦目の三重パールズに0-33で完敗した。

 2日目最終日では準々決勝でまたも三重パールズと対戦し、5-29で屈した。雪辱は成らなかったけれど、一矢(いっし)は報いた。PKからの速攻で谷山から堤、再び谷山とつなぎ、パスダミーで相手を振り切って、左中間に飛び込んだ。(パ―ルズが優勝)

 5-8位決定戦に回り、初戦の北海道バーバリアンズ・ディアナには42-17で快勝した。ふだんの練習で積み重ねてきた、日体大らしい走ってつなぐ「ランニングラグビー」が威力を発揮した。ひとり1人がギャップをついたり、ポジティブに仕掛けたりして、連携もとれていた。「いいぞ、日体大!」ときたもんだ。

 

◆谷山「悔しいです」

 

 すべての試合が終わった後のミックスゾーン。谷山は全国紙の記者のインタビューを受けた。ひたいから汗が流れ落ちる。エライもんだ。疲れながらも、ハキハキとした口調で応えていた。

 「自分でできたところと、できなかったところがはっきりしたと思います。ワイドに展開して得点につなぐことはできたので、そこは継続してやっていきたいなと思います。ディフェンスでも、アタックでも、コネクトの部分で反省点があったので、そこは修正していきたいなと思います。バーバリアンズ戦では自分たちのアタックができて、少し自信になりました」

 代表としての国際経験は力になっていますか?と聞かれると、谷山は「はい。そうですね」とうなずいた。流れる汗は止まらない。

 「でも、この大会でも外国人がいっぱいいて、試合のレベルはあまり変わらないと思っています。一戦一戦、自分のベストを尽くしていければいいと思います」

 インタビューがー終わる。どうだった?と声をかけると、少し顔をゆがめた。

 「悔しいです」

 

◆教育実習明けの高橋夏未「体重が3キロは落ちました」

 

 高橋夏未はやはり、タフである。3週間の教育実習明けでも運動量の多さとランのキレがいぶし銀の光を放った。「暑かった~」と明るく言った。

 「体重が3キロは落ちました。教育実習で練習は3週間ぐらいしていないので、それを考えたら、割と動いていましたよね。個人的には(チーム戦術を)ちゃんと理解して試合に臨めるのかどうか不安でしたけど・・・。チームの流れが悪かった時、その流れを変える言葉だったり、行動だったりで見せることができなかった。この経験を踏まえて、次は絶対、後悔しないよう、勝ちにこだわってやっていきま~す」

 

◆1年生の齋藤「勉強になりました」

 

 とくに1年生にとっては、よき経験となっただろう。杉本姫菜乃(栃木・國學院栃木高)の負傷は痛かったけれど、齋藤紗葉(すずは=関東学院六浦高)、浦山亜子(大村工高)、藤原にとってはよき“洗礼”となっただろう。

 齋藤は初々しかった。目がキラキラだ。大会の感想を聞けば、コロコロと笑った。

 「はい。勉強になりました。はい。フィジカルの差を感じました」

 

◆ゲーム主将の持田「次の大会ではぜんぶ勝ちます」

 

 冷たいアイスバスで生き返ったゲーム主将の持田もまた、開口一番、「暑かったですね」と笑顔で言った。 

 「2試合目(北海道バーバリアンズ戦)が一番、ニッタイらしい試合でした。FWが前に出て、アタックを仕掛けられたら、アグレッシブなニッタイらしいプレーができるんです。最後のTKM戦はできてないわけではないんですけど、ちょっとかみ合わないところがあって、(トライを)なかなか取り切れませんでした」

 第2戦の北九州大会まで1カ月ほど期間が空く。

 「どの試合も決して勝てないことはなかったと思います。1カ月、徹底的に練習して、次の大会ではぜんぶ、勝ちます。絶対に」

 いいぞ、いいぞ。その意気である。

 最後に聞いた。「オールアウトはできましたか?」と。

 「オールアウトはしたけれど、持っている力を全部は出し切れなかったと思います。う~ん。まだまだ、いけたな」

 学生チームは伸び代が大きい。まだ成長過程。この経験を糧とし、己自身にチャレンジを続けることができれば、チーム力が飛躍することになる。ワクワクするじゃないの。


(筆:松瀬学、写真:善場教喜さん)

 
 

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