「猛暑下の死闘。日体大は6位に終わる」
- nittaidai
- 8月4日
- 読了時間: 7分
まっちゃん部長日記@太陽生命女子セブンズ花園大会
炎暑の夏、アツいアツい死闘がつづく。7人制女子ラグビーの年間王者を決める太陽生命女子セブンズシリーズの第3戦・花園大会。大会名にふさわしくギラギラ太陽が照り付けるなか、日本体育大学は学生らしく走り回ったけれど、残念無念、燃え尽きた。6位に終わった。
「“選手がかわいそう”としか、言葉が出てきません」と、日体大の古賀千尋監督は漏らした。言葉に滋味がにじむ。
「(選手は)ほんとうに疲れていますよね。みんな疲労困憊でしょ。ほとんど熱中症ですよ」
グッド・ジョブ! ほんと、よくがんばった。強い陽射しで荒れた芝生。気力を振り絞った選手。汗だくで声を枯らした保護者とノンメンバー。熱中症で倒れたベテランカメラマン。唐突ながら、ここで一句。
<女子ラグビー 見てるこちらも 熱中症>

◆怒とうの攻めも相手ディフェンスちぎれず
8月3日。東大阪市・花園ラグビー場。日体大にとっての大会最後の試合は、午後4時過ぎキックオフの5位決定戦だった。相手は、横河武蔵野アルテミ・スターズ。

実は日体大は九州大会同様、熱中症で主力がひとり、欠場さざるをえなかった。スタンドでは汗だくの保護者、ノンメンバーが濃紺と薄いブルー横縞の日体大の小旗を打ち鳴らす。気温が34度。大声がうだる暑さを吹き飛ばす。
「いけ、いけ、ニッタイダイ!」
「最後に勝つのは、ニッタイダイ!」
「やるか! やるかっ!」

あえて勝負のアヤを探せば、序盤の攻防だっただろう。日体大は立ち上がり、攻めていった。大きく右に左にボールを回し、横河ディフェンスを揺さぶった。でも、ちぎれない。右オープンに回して、島本星凛(きらり)が右ライン際を疾走する。あと1メートル、結束のタックルに阻まれ、ゴールラインには届かない。
ターンオーバー(攻守逆転)を許し、一気に反撃を許した。でも、島本がスティール(旧ジャッカル)を仕掛けてペネルティーをもぎとる。頑張り屋の松田奈菜実が力強いランをみせる。エース格の谷山三奈子が巧みなスクリューパスでつなぐ。でも、日体大は敵陣深くに攻め込んで痛恨のノックオン。
横河に一気に70㍍ほど走られて、先制トライを奪われた。松田が懸命に追いかけたけれど及ばなかった。でも、最後まであきらめない姿勢に心を打たれた。
◆持田ゲーム主将「取れるところで取り切れなかった」
結局、日体大は0-12で敗れた。ノートライ。古賀監督はさばさばした口調で続けた。
「相手のディフェンスが素晴らしかった。最後までちぎれなかったから。逆にこちらはハンドリングエラーが多かった。チャンスの場面でエラーを繰り返してしまいました」
暑さのせいだろう、日体大の持ち味のプレーの精度が鈍っていた。そう見えた。勝負どころのしぶとさがこの日は影を潜めた。
ただひとり、5位決定戦でフル出場した持田音帆莉(ねおり)ゲームキャプテンは試合後、こう悔しがった。
「取れるところで取り切れなかった自分たちの甘さが出ました。もう暑さでからだもココロもぼろぼろですね。花園が思った以上に暑すぎて…」

◆北海道バーバリアンズ戦。あきらめない。ロスタイム齋藤が意地のトライ。
学生チームはまだ、成長途上である。
毎大会、毎試合、経験を積みながら学んでいく。
持田は言った。
「チーム13人、総力戦で戦えることがわかりました。今回もシニアの大人の方々からたくさん学びを得られたので、一度、チームに持ち帰って分析して、どう改善して戦うかを考えて、次(札幌大会)は頑張りたいと思います」
そういえば、花園大会前には、学生だけで心理セミナーを受講し、スロースタートの改善につとめたそうだ。早い時間帯の1試合目で負けることがあったけれど、マインドセット(心構え)を意識することで持ち味を発揮することができた。
大会1日目は、午前9時過ぎキックオフの北海道バーバリアンズ戦には21-12で快勝した。2試合目の躍進のナナイロプリズム福岡には17-21で惜敗。3試合目の追手門学院大学ビーナスには24-19で勝利した。2勝1敗で準々決勝へ。
8月3日の午前9時過ぎからの準々決勝は、ナナイロプリズムとの再戦となったが、12-22で雪辱を果たすことはできなかった。
髙橋夢来が先制トライを決めたが、日体大OGの永田花菜に2トライを奪われて、逆転された。後半はフィジー出身のレアピ・ウルニサウにディフェンスを壊され、2トライを献上した。ただ、あきらめない。
ノーサイドのホーンが鳴ったあとも、日体大は攻め続け、最後は橋本佳乃が右手をぐいと伸ばしてボールをインゴールにたたきつけた。意地は見せた。
日体大はあきらめないのだ。5-8位決定戦に回った日体大は初戦でまたも北海道バーバリアンズと対戦。1点ビハインドの日体大はロスタイム、つなぎにつないで、齋藤紗葉(すずは)が左隅に飛び込んだ。掲示板の時計は「8:08」だった。ナイストライ! 感激屋のおっさんはそう、心で叫んだ。
松田が、左隅の難しい位置からのドロップキックを蹴り込んで、28-22としたのだった。そして、5位決定戦へ。
◆堤ほのか「学生らしくがんばって優勝で締めくくりたい」
いつも陽気な齋藤(関東学院六浦高卒)はまだ19歳、ピカピカの1年生。
「えっと。暑くて、結構、体力失われました。しんどかったです。もうちょっとできたかなと反省しています」
チームでは、ホープ大内田葉月(修猷館高卒)、浦山亜子(大村工業高卒)も19歳。齋藤はニコニコ顔で言い切った。
「次(札幌大会)は涼しいので、悔いのないよう、走り回ります」
かたや、“ねえさん”こと、28歳のOG堤ほの花もがんばっていた。試合後、アイスバス&シャワーのあと、涼しげな顔で「いや、疲れました」と笑った。
「最後は勝って終わりたかったんですけど、相手のディフェンスがよかったですね。ある意味、13人、14人で戦えた大会だったかなと思います」
いつもポジティブ。
「まずからだをリカバリーして、次(札幌大会)は上を目指すだけですから。私は学生じゃないけど、学生らしくがんばって、優勝で締めくくりたいと思います。今度は楽しく、笑顔で会場を帰りたい」
それにしても、若い! この存在感。いるだけで、チームの雰囲気が明るくなる。がんばるモチベーションは?と聞いた。
「う~ん。ラグビーが楽しいからじゃないかな」
太陽のごとき笑顔で言葉を足す。
「何かを倒したり、何かがうまくいったりすれば楽しいでしょ。ま、うまくいったと思えば、次はうまくいかなかったり、で、またうまくいったり、いろいろありますけど。やっぱり、奥が深いところがオモシロいですね」
◆最後に勝つのはニッタイダイ!
これで太陽生命女子セブンズシリーズは、1戦目の熊谷大会が6位、2戦目の北九州大会は8位、この花園大会は6位となった。シリーズポイントは26点で総合7位。
この順位は次のグランドファイナル札幌大会(8月17日・北海道・大和ハウスプレミストドーム=旧札幌ドーム)の組み合わせに影響するが、年間順位となる総合順位には特に影響はない。第3戦までのポイントは持ち越さず、札幌大会での総合順位決定トーナメントで順位が決まることなる。つまり、昨年までのフォーマットと違い、札幌大会に出場するどのチームにも優勝のチャンスがあることになる。
古賀監督は、「ことしの方式は学生にとってはありがたい」と言う。
「毎回、学びがあって、最後まで成長し続ける事ができますので。大会ごと、そう一喜一憂する必要がなくて済みます。最後に(順位を)ひっくり返そうという希望は残せますから」

ここで、ひと呼吸。
「この2週間、まずはリカバリーして、細かい修正をしていきたい。相手がどうこうではなくて、自分たちに矢印を向けていきます」
そうなのだ、自分たちのラグビーとは、何よりマイボールを継続していくことだろう。基本に忠実、アタックもディフェンスのラインも崩れない。走り負けないこと。高いラグビーナレッジ(理解度)と集中力。たとえ1対1で後手を踏んでも、チームとして相手を凌駕する。
そして、勝負のしぶとさ。相手に挑みかかる気概。
All Out やるか、やるか。
それでは、みなさん、ご唱和ください。声高らかに。
「最後に勝つのはニッタイダイ!」
(松瀬学)