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まっちゃん部長日記@日体大、涙、涙のノーサイド。

  • nittaidai
  • 18 時間前
  • 読了時間: 11分

 なんと尊いものだろう、二度と帰らぬ青春の涙とは。新春4日。日本体育大学ラグビー部女子は、15人制の関東大会最終戦で横河武蔵野アルテミ・スターズに敗れ、全国大会進出の夢はついえた。これでシーズン終了。部員たちはみな、悔し涙を流した。

 ノーサイドから約1時間が経った。着替えて全員集合のロッカー室。主将の4年生ナンバー8、向來桜子は泣きながら、声を張り上げた。もらい泣き、鼻をすする他の部員の音も聞こえる。

 「4年間、ほんとうに楽しかったです。みんな、お疲れさまでした」

 学生スポーツは切ない。活動は、4年間と有限である。だから、青春のすべてをぶつける。毎年、チームのメンバーは入れ替わる。シーズンが終われば、4年生は必ず、卒業する。じっと、目をつむると、さまざまな仲間との出会いやわかれのかたちが思い出されて、学生生活の濃密な時間をしのばせてくれる。


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 花に嵐のたとえもあるさ

  さよならだけが

   人生だ

 

 ◆日体大、『魂(かたまり)』のディフェンス

 

 全国大会キップをかけた試合だった。神奈川県小田原市の小田原市城山競技場。日体大は勝てば、関東大会上位2チームに入る可能性が大きくなり、全国大会出場の夢が膨らんだ。負ければ、全国大会への道は閉ざされるのだった。結局、10-19で敗れ、日体大は3勝3敗の4位に終わった。

 「魂」。これが試合のテーマだった。試合前、古賀千尋監督が説明してくれた。「魂と書いて、かたまりと読むことにしているんです」。つまりはチーム一丸だった。魂の結束である。

 午前11時30分キックオフ。序盤から日体大の魂のタックルが炸裂した。相手FWは大型で日本代表選手が並ぶ。しかもフランカー山本和花らFW4人は日体大OGときたもんだ。基礎がしっかりして強いに決まっている。

 序盤の数分間、日体大はゴール前ピンチが続いた。でも、横河の強力選手たちにひるまず、まっすぐ挑みかかった。タックル、タックル、またタックル。とくに向來主将、4年生プロップの峰愛実、4年生フランカーの持田音帆莉、2年生ロックの八尋瑛の猛タックルたるや。その度、スタンドがどよめいた。

 前半13分、ラインアウトからのドライビングモールを押し込まれて、先制トライを奪われた。でも、すかさず反撃。3分後、PKをタッチに蹴り出して、ラインアウトからモールを押し込み、前進を阻まれれば、ラックサイドをこれでもか、と次々ついて、プロップ峰が右中間にボールを持ち込んだ。4年生の意地のトライ!

 成長著しい2年生SOの谷山三菜子がゴールキックを慎重に蹴り込んで7-5と逆転。さらに前半29分には真ん中左からの20メートルPGを難なく成功させ、10-5とリードを広げた。前半はこのスコアで折り返し。


 ◆後半、パワフルな横河にセットピースでやられる。痛恨のコラプシング

 

 古賀監督の述懐。

 「ディフェンスは最初、よかったですね。魂を見せてくれたと思います。タックルは素晴らしかったですけど、セットピース(スクラム、ラインアウト)でやられました。アタックのスクラムでは球すらでなかった。それと、ハイパントの対応ですね」

 後半は、相手のハイパントとパワフルな攻めに自陣での攻防がつづいた。スクラムの度、ノンメンバーの声が飛ぶ。「アコ! 引くな!」。1年生フッカーの浦山亜子への檄である。トイメンは日体大OGの日本代表フッカーの谷口琴美だ。スクラムは何より、気持ちで負けたら押し込まれる。

 接点でも食い込まれるようになっていった。後半8分、ゴール前ピンチのPKから攻められ、日本代表の横河SH、津久井萌にポスト下に飛び込まれ、ゴールも成って、10-12と逆転された。

 あえて勝負のアヤを探せば、その後、敵陣に入っての日体大ボールのスクラムだったであろう。これを押し崩され、コラプシング(故意に崩す行為)の反則をとられた。この逸機は痛かった。しかも、スクラムの要の右プロップ、3年生の麻生来海が足を負傷して退場する羽目になった。

 その後のマイボールのスクラムでもコラプシングの反則をとられた。後半36分、PKからどとうの攻めを食らい、日体大の先輩のベテランフッカー谷口にとどめのトライを奪われてしまった。ゴールも決まり、10-19となった。

 

 ◆最後に日体大らしいスピーディーな展開攻撃

 

 でも、日体大魂は生きていた。ここから、ようやく日体大らしいスピーディーな展開攻撃がはじまった。FWが走る。SO谷山がボールを左右に散らす。4年生の高橋夏美、交代出場の4年生の松田奈菜実が最後の力を振り絞って走り回った。テンポよくボールがつながる。期待の1年生CTB、大内田葉月も鋭利するどいランで勝負を仕掛けた。

 これだ、これ。敵陣深くに入って、最後はノックフォワード(旧ノックオン)。スクラムからタッチに蹴り出され、冬空に乾いたノーサイドの笛が鳴った。


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 ◆古賀監督「非常に残念です」、でもチームは成長「おもしろかったですね」

 

 試合後、古賀監督に声を掛ければ、「非常に残念ですね」と小声で漏らした。

 「今日、(シーズンを)終わるつもりは全然、なかったので。神戸(全国大会の会場)に行く気は満々でしたけど。蹴りすぎの観はありました。キックと展開のバランスを、状況判断できるようになるともっとよかったかなと思います。うちはいいランナーがいっぱいいるので、そこをもうちょっと使いたかった。向こうのやりたいラグビー、強みを前面に出させてしまいました」

 そうは言っても、若い学生チームはシーズンを通して成長していた。関東大会初戦(昨年11月9日)で立正大に苦杯を喫し、続くPieces(ピーシーズ=同11月23日)では勝利しながらもノックフォワードを18回もしていた。

 そんなチームが、セブンズ日本代表の谷山、大内田、高橋夏未が合流すると、“日体大らしい”チームに変わっていった。前節(昨年12月28日)には、関東大会を制したYOKOHAMA TKMを倒すまでになった。

 まさにチームとは生き物である。古賀監督は「おもしろかったですね」と少し笑った。

 「こんなにチームが成長するとは思いませんでした。学生らしく、成長しました。今日は、ノックオン(ノックフォワード)、球をあまり触ってないのもありますけど、5回くらいしかしていないんじゃないかな」

 

 ◆日体大女子ラグビーの“母”並木富士子さんも観戦「最後まで走り続けて」

 

 ところで、この日、試合会場には、日体大女子のレジェンドが2人、駆け付けていた。1990年代、日体大ラグビー部女子の基盤をつくった並木富士子さんと、日体大OGで日本ラグビー協会副会長(理事)の浅見敬子さんである。

 並木さんは試合前、ロッカー室で選手たちにあいさつし、「今の自分の時間を大切にしてください」と言ったそうだ。並木さんはいわば、“日体女子ラグビーの母”か。グラウンド脇で話を聞けば、こう柔らかい声でおっしゃった。

 「(日体大は)学生のまとまったチームですから。相手チームにも日体大の卒業生がいて、うれしいことです。日体大といえば、やはり走るラグビー、ランニングラグビーなので、最後まで走り続けて、チャレンジしてほしいですね」

 青春を突っ走れ!といった感じですか、と言えば、並木さんは笑いながら、「そうそう、(ジャージーは)青ですからね」と話を合わせてくれた。

 浅見さんは後輩たちに「完全燃焼」を期待した。こちらは、“日体女子ラグビーの長女”といったところだろう。

 「普通、4年間、ここまでラグビーに情熱を注げられないじゃないですか。スポーツ専門の大学に入学して、ラグビーに集中できる環境にあります。学生はすごく恵まれています。親御さんにも感謝です。だから、4年間、自分の最大限のパフォーマンスを出すことは大事ですよね」

 日体大の強みは?

 「古賀さん(監督)がやっぱり、分析なども緻密にやってくれるじゃないですか。一人ひとりを丁寧に見ているし、選手もそれに応えようとしてやっています。ひたむきに、ピュアにラグビーに向かっていく姿勢でしょう」

 

 ◆向來主将「すごく楽しいラグビーが4年間、できた」

 

 試合終了後の表彰式。

 向來主将が「モストインプレッシブプレーヤー」に選ばれた。

 マイクに向けて、「全国大会に出場するために勝利が必要な一戦だったんですけど」と話したところで言葉に詰まった。涙が目にあふれる。スタンドで「よくやった」「がんばれ!」との拍手が巻き起こる。

 「みんなと一体感を持ってプレーできたことを、すごくうれしく思います。下級生がすごく成長し続けてくれた1年間だったので、これからも日体大の応援をよろしく、お願いします」

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その30分後、ロッカー室の前で話を聞けば、向來主将は「悔しいです」と漏らした。

 「とくに4年生にとっては、すごく悔しい試合でした。ただ下級生も悔しいとは思いますけど、すごくいい経験になると思います。この悔しさを来年に生かしてくれればいいのかなと思います」

 どんな4年間でしたか?

 「あっという間でした。勝ってうれしかったり、負けて悔しかったり…。みんなで準備してきたものを発揮できた試合があれば、できなかった試合もあって。1年生の時から試合に出させてもらって、自由にやらせてもらって…。ちーさん(古賀監督)をはじめとして、先輩、後輩、そして同期に支えられてばっかりでしたけど、すごく楽しいラグビーが4年間、できたなと思います」


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 ◆主将の手首には4年生・畑田の檄「桜子の分まで」

 

 ふと右手首をみれば、薄茶色のテーピングテープにこう、黒字で書かれていた。<桜子の分まで」と。試合前、負傷欠場した4年生の畑田桜子が書いたものだった。

 その畑田は笑いながら言った。

 「なんか、ラグビーの楽しさを知ることができました。ラグビーってこういうものだなって。いろいろありましたけど、(4年間)ほんと、楽しかったです」

 表彰式後、4年生6人が集まって記念撮影に応じていた。


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 ◆涙の4年生・高橋夏未「一体感を持ってラグビーができた4年間」

 

 豊富な運動量でチームを引っ張った高橋夏未は撮影後、ひざをついたまま、しばらく泣いていた。見ているこちらの胸も痛くなる。

 「結構、強気ではいけたんですけど、丁寧さだったり、集中力だったり、相手より足りなかったかなと思います。最後、声掛けとか、プレーでチームを立て直したかったんですけど、できませんでした。ラグビーって難しいなと思いました」

 どんな4年間でしたか?

 「強いチームに入ってきて、こう、4年間過ごす中で、いい先輩といい後輩に出会えて、自分だけで強くなるというより、みんなで一緒に一体感を持って、ラグビーができたなと感じた4年間でした」

 

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 ◆ラグビーから離れる4年生・持田副将「心も体もどっちも成長できた」

 

 ほとんどの4年生が卒業後もラグビーを続ける中、副将の4年生フランカー持田は、競技生活から離れる。言葉に実感をこめる。

「これでラグビーは終わっちゃうんですけど、自分の人生において、すごい経験ができたなと思います。心も体もどっちも成長できた、そんな4年間でした」

 いつも元気ながんばり屋さんの松田奈菜実はこうだ。

「4年間、あっという間でした。けがとかで悩まされたんですけど、周りの仲間からの励ましがあって、ここにいます。強い自分になったのかなと思います」


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 4年生の最後は、チーム内MVP(ゴールドシール)に選ばれた峰愛美はうれしそうだった。「最後、日体大らしい一体感を出せました」と言った。

 「私も、4年間、すごく楽しかったことのほうが大きくて。きつい練習とかもあったけれど、それをみんなで乗り越えて、今の自分たちがあると思います」


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 ◆3年生・水野小暖「この悔しさをバネに絶対、全国制覇を」

 

 人は変われど、日体大ラグビー部というチームは引き継がれていく。

 3年生センターの水野小暖は、「個人的には不完全燃焼です」と言い切った。

「悔しい。まだ試合が終わってない気がします。来年度、この悔しさをバネに絶対、(全国)制覇します」

 

 ◆2年生・谷山「すごくいい1年だった」、1年生大内田「1年間、メチャ短く感じた」

 

 2年生エースの谷山もまた、「不完全燃焼」と口にした。

 「やりたかったことができなかったことがほんと、悔しいですね。ゲームをうまく運べなかったのが、甘かったかなと思います。(スペースが)空いているところにもう少し早めに攻めていたらよかったかなと。そこは私の責任だと思います」

 どんなシーズンでしたか?

 「最後悔しかったんですけど、ことしは15人制の試合もプレーできて、自分にとってはすごくいい1年だったなあって思います」

7人制日本代表でも活躍し、2025年ワールドチャンピオンシップの『ベストトライ賞』にも輝いた。20歳は言葉に力をこめた。

 「ことしは下級生が多く、来年度にも主力の選手が残っていくので、みんなで力を高め合っていけたらいいなと思います」


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 ピカピカの1年生、我が母校の福岡・修猷館高卒の大内田葉月は、「今日は、ボールを持つ機会がメチャ少なかったです」とこぼした。

 「1年間、メチャ短く感じました。あっ、もう1年が過ぎたんだなって。ほんと、ラグビーが充実し過ぎていました。来年度も日体大の選手として、日本代表として、結構、がんばっていきたいです」


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 ◆古賀監督「相手に対抗できるセットピースを作り上げる」

 

 再び、古賀監督。負けじ魂に火が付いた。

 「今日の(横河の)セットピースに対抗できるセットピースを作り上げないと、全国大会にはいけないということを痛感させられました」

 来年度には有望なFWが大勢、入学してくる見通しだ。

 「FWの層が少し厚くなります。楽しみです」

 

 ◆部長も“卒業”。「サヨナラ」ダケガ人生ダ

 

 余談ながら、僕も3月、日体大を“卒業”し、他の大学に移る。

 ラグビー部長は交代となる。

 3年間、心もからだもボロボロだったけれど、実は日々、心ズキズキ、ワクワクだった。若者の情熱と意気に触れれば、疲れは吹っ飛び、楕円級のごとく、心はあちこちに弾むのだった。

 古賀監督、伊津野立一トレーナー、ありがとうございました。

 学生のみなさん、とても感謝です。

 保護者のみなさん、大学関係者、ファンのみなさん、ありがとうございました。

 それでは、どこかのラグビー場でまた、お会いしましょう。

 

 冒頭の詩の原詩は、中国の于武陵(うぶりょう)の『勧酒(かんしゅ)』である。それはこうだ。

 

 コノサカヅキヲ受ケテクレ

 ドウゾナミナミツガシテオクレ

 ハナニアラシノタトエモアルゾ

 「サヨナラ」ダケガ人生ダ


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           (2026年1月4日/筆:松瀬学、写真:善場教喜さん)

 
 

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