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『日体大がプライドと信頼の大学4連覇。』

  • nittaidai
  • 6月10日
  • 読了時間: 6分

まっちゃん部長日記@熊谷ラグビー場<Yahoo!から転載>


古賀監督「やっとでチームになってくれた」

 これぞ大学王者のプライドだろう。『Women`s College Sevens 2025/第12回大学女子7人制ラグビー大会』。日本体育大学が最後に「チーム」となり、決勝で立正大に逆転勝ち、4年連続の優勝を遂げた。

 信は力なり、である。互いを信頼する。アタックでつなぎ、ディフェンスでは結束して前に出る。日体大の古賀千尋監督は安堵の表情を浮かべた。

 「最後、やっとでチームになってくれました。勝利を重ねるごとに、お互いの意思疎通がとれるようになっていった。“あ・うん”の呼吸が少しずつ、生まれていきました」

 ひと呼吸おく。言葉に実感をこめた。

 「“最後に勝つのは日体大というのを信じてやろうね”と、ずっと選手たちに言ってきました。チーム間の信頼が芽生えた大会でした。(決勝の立正大は)素晴らしかった。ええ、勝てて、よかったです」

 


 ◆決勝前のウォームアップ「やるか! やるか!」

 

 8日、猛暑の熊谷ラグビー場。大学のチームは当然ながら、毎年メンバーが入れ替わる。新しいシーズンが始まった。その初めての公式戦。近年の学生の大会らしく、スタンドには保護者が多く、目に付いた。

 今年の日体大のチームスローガンが『All Out やるか、やるか。』である。ふだんの練習で積み重ねてきたことに自信を持って、全てを出し切る。やり切るしかない。その覚悟はあるのか、そういった意味だろう。決勝戦前の屋内のウォーミングアップ場。円陣では大声を出し合った。「やるか! やるか!」

 主将の大黒柱、向來桜子は女子15人制日本代表の活動のため、大会は欠場した。この日は、ウォーター係としてサポートに回った。決勝前、向來はこう言った。「楽しみな選手ばかり。(決勝戦は)やってくれるでしょ」

 勝負の決勝戦。スタンドでは日体大のノンメンバーや保護者の応援団の群青色の小旗がばたばたはためいた。かけ声が熱風にのる。「ニッタイダイ! ニッタイダイ!」

 

 ◆古賀監督、ハーフタイム「丁寧にやろう」

 

 相手は立正大学。その闘志がすさまじく、気圧された日体大はハンドリングミスを重ねた。ミスしたボールをオープンにつながれ、先制トライを奪われた。

 すかさず反撃。2年生のエース、7人制日本代表の谷山三菜子、1年生の齋藤紗葉(すずは=神奈川・関東学院六浦高)がトライを重ねたが、前半終了間際に同点トライ(ゴール)を奪われた。14-14で折り返した。

 たった2分間のハーフタイム。古賀監督はディフェンスのシステムのポイントを指示し、こう言葉を足した。

 「丁寧にやろう」

 

 ◆ルーキー大内田が劇的トライ、そして3人の力の結束でターンオーバー

 

 だが、両チームとも、2日間で6試合目、体力はもう限界にきていた。疲れはハンドリングにも出る。勝負の後半が始まった。

 後半の4分過ぎ。中盤でターンオーバーを許し、トライを奪われた。14-19とリードされた。時間が刻々と過ぎていく。日体大が猛反撃に転じた。ラスト60秒。相手にイエローカードが出る。日体チャンス。

 中盤のペナルティキックから高橋夏未が左に切り返した。谷山がディフェンスの隙間をするどく突いて、左オープンの1年生の大内田葉月(福岡・修猷館高)にパス。アングルを少し変えてまっすぐ疾走し、中央に飛び込んだ。トライ! 見ていて、心が震えた。

 谷山のコンバージョンキックが決まり、21-19と逆転した。でもリードはわずか2点。残り30秒。立正大の反撃を浴びた。流れが相手に傾く。試合終了を告げるホーンは鳴ったが、相手の攻撃が続く。

 オープンに回されたところで齋藤が懸命のタックル。ボールがダウンボールされた瞬間、ポイントに大内田、高橋が殺到した。

 すぐに立ち上がった齋藤と大内田、高橋がポイントを乗り越えていく。タッチライン際に3人の力と意志が集中した。ターンオーバー(ボール奪取)に成功し、高橋がボールをタッチラインの外に蹴り出した。

 

 ◆選手の喜びも控えめ。谷山「まだ弱い」

 

 ノーサイド。スタンドのノンメンバーたちは歓喜に沸いた。「ニッタイダイ、ニッタイダイ」。でも、グラウンドの選手たちは喜びも控えめだった。大会MVPに選ばれた谷山は、「優勝はうれしいですけど、まだ弱いなというのは感じました」と言った。

 「決勝戦は失点ゼロで抑えようと話をしていたので、先制されて、ショックを受けたというか、少し気持ちが下がった部分があったんです。切り替えていけたのはよかったかなと思います」

 この大会の目標は日体大として圧倒的な強さを見せることだった。でも、苦戦した。

 「自分のミスが重なって…。自分の弱さが出てしまいました。最後まで頑張れたのは、ふだんの練習と、代表で学んできたことのお陰です。最後にチームになりましたが、まだ個々でやっている感じです。太陽生命(ウィメンズセブンズシリーズ/6月21日開幕)に向けて、2週間で課題を修正していきたいと思います」

 そういえば、谷山はロッカールームの掃除のあと、その道具を片付けていた。プレーだけでなく、人間的な成長も垣間見えたのだった。

 

 ◆ルーキー大内田「危なかったです」

 

 殊勲の大内田は、「危なかったです」と正直だった。

 「日体大に来て、ほんと、よかったです。ラグビー面では、成長できています。まだまだ、“これから”ですが。いろんなことを吸収できると思います」

 決勝では、大内田ほか、齋藤、杉本姫菜乃(ひなの=栃木・國學院栃木高)のスーパールーキーたちが光り輝いた。

 杉本は言った。

 「初めての公式戦で緊張したんですけど、先輩方に助けられて、伸び伸びプレーすることができました。まだまだなんで。太陽生命でも優勝できるよう頑張りたいです」


 

  ◆ゲーム主将の持田「学生ナンバーワンは負けてはいけない」

 

 この大会のゲーム主将を務めたのが、がんばり屋の持田音帆莉(ねおり)だった。ガラスの優勝トロフィーを持ち、顔をほころばせた。「力を出し切りましたか?」と聞けば、「う~ん」と答えに窮した。

 「やる気が空回りというワケじゃないですけど、自分たちがやりたいことをできずに終わってしまう試合が多くて。最後は僅差で勝たせてもらいましたけど、自分たちが納得できる内容にはならなかったですね」

 でも、大会4連覇。勝ち切った理由を聞けば、「プライド」と即答した。

 「私たちは学生ナンバーワンだから、絶対に負けちゃいけなかったんです。そこだけは絶対に譲れません。やっぱり、プライドがみんなの中にありました。それがたぶん、勝因だと思います」



 プライドの結晶が、最後のブレイクダウンでのターンオーバーだったのだろう。きつい時ほど、ふだんの練習の成果や日常の精進が出るものだ。

 スポーツの世界において、勝って反省は理想だろう。太陽生命ウィメンズセブンズシリーズでは、屈強な社会人選手や外国人選手で編成されたシニアチームが相手となる。日体大ユニコーンズはまだ、成長途上。

 今度こそ、All Outである。「やるか、やるか」。そう、立ち上がりから、やるしかあるまい。(筆:松瀬学、写真:善場教喜さん)



 
 

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