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『学生オンリーの日体大が王者・ながとを降し、連勝を「33」でストップ。結局4位』

まっちゃん部長日記@7人制太陽生命シリーズ熊谷大会


 この深い感動は何なのだろう。7人制女子の日本一を決める『太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ』第2戦、熊谷大会の準々決勝。まだ成長途上の日体大ユニコーンズが、昨季の年間王者(全4大会で優勝)のながとブルーエンジェルスを延長戦の末に17-12で降し、シリーズ連勝を「33」で止めた。春のそよ風に吹かれて若い力が躍動したのだった。



◆大内田選手の獅子奮迅の活躍で同点に追いつく

 

 日曜の4月21日。薄曇りの熊谷ラグビー場には、千人を超えるラグビーファンが朝から駆けつけ、白色と紺色の横縞模様の日体大の小旗もバタバタと振られた。人の心を動かすプレーの連続に日体ファンの声援のボルテージも上がった。「ニッタイ!ニッタイ!」



 前日のグループ戦の敗戦(14-26)のリターンマッチは、劇的な幕切れとなった。12点のビハインドで折り返した日体大だったが、後半、反撃に転じた。後半3分、左右に振り回し、新1年生の谷山美菜子選手(佐賀工業高卒)からパスを受けた名手・大内田夏月選手が右中間に飛び込んだ。トライ!

 

 さらに3分後のラスト1分。大内田選手が天性の才能を発揮した。練習の成果だろう、山田莉莉瑚選手から「あ・うん」の呼吸でナイスパスを受け取ると、しなやかで鋭利するどいランで密集を抜け出し約60㍍を駆け抜けた。濃紺のヘッドキャップの下、後ろで束ねた長い髪を揺らしながら。ど真ん中にトライし、谷山選手が慎重にゴールを蹴り込んだ。12-12の同点に追いついた。

 

 ◆死闘の末の劇的な幕切れ。涙、涙、涙・・・。

 

 どちらかがポイントをとったところで勝負が決まるサドンデスの延長戦に入った。体力の限界に近づきながらも、どちらも死に物狂いだ。最後は気持ちの強い方が勝つ。

 ながとのキックオフで開始。ボールをキープすると、日体大がグランドいっぱいを使ってつなぎにつないで攻めていく。それにしても、主将の樋口真央選手のフィットネス、向來桜子選手の奮闘、大内田選手の頑張りといったらなかった。地味ながらも、ひたむきなタックル、組織だったディフェンスもいぶし銀の光を放った。パワフルな外国人選手の突進も執念のタックルで阻んだ。

 

 延長戦の2分過ぎだった。日体大が敵陣深く攻め込み、向來選手がタテを突く。捕まっても、懸命に前に出る。もがく、暴れる。ブレイクダウンで相手の反則を誘い、PKをもらった。比較的ドロップゴールを狙いやすい位置だったが、ゴールは狙わず、素早くラインに回した。トライ狙いだ。

 えっ。もう、びっくりだ。途中から入った高橋夢来選手から島本星凛選手、そして最後は樋口主将にボールがつながり、ディフェンスラインのスペースを突いてインゴールに走り込んだ。やった~、トライだぁ。勝ったぁぁぁ~。ついにながとを倒した。(イタタタ~。僕は両手を強くたたきすぎて、不覚にも右手親指を突き指してしまったのだった)

 インゴールには日体大選手のかたまりができた。樋口主将も、大内田選手も、みんな感涙にむせんでいた。涙、涙、涙、あぁ涙は貴重で尊いのだった。



 

◆号泣の大内田選手「去年からずっと目標にしていたチームでしたから」

 

 「ながと戦、泣きました?」。大会終了後、そうストレートに聞けば、大内田選手は満面の笑顔でこう、打ち明けた。「はい、号泣でした。勝って泣くのは、珍しいんですけど」と。

 「もう(ながとは)去年からずっと目標にしていたチームでしたから。今年も一大会目は1位だったので。みんな、ここで(ながとを)倒したいという気持ちが強かったんです」

 ながと戦の後半の2トライは?

 「味方が結構、つないでくれたボールですから。最後、もう走りきるしかないと思ってがんばりました。はい」

 

 ◆結局4位。古賀監督「ステップアップしていると思います」

 

 これで初優勝に走るかと見えたが、新チームにはまだ安定感はなかった。けが人続出、代表クラスの選手も不在で、他の社会人クラブと比べると選手層も薄い。悔しいながら、体力はもう限界だった。

 準々決勝から約2時間半後の準決勝では、三重パールズに19-31で敗れ、その1時間半後の3位決定戦では横浜TKMに5-24で屈したのだった。結局は4位に終わった。



 古賀千尋監督も少し疲れ気味の表情だった。「選手はよく頑張りました」と言葉に滋味をにじませ、こう続けた。

 「ながとさんからの勝利はやはり、うれしいですね。(ながとを)倒すとしたらウチだと思っていました。まだ(好不調の)波はありますけれど、みんなやるべきことが明確になったというか、プレーに迷いがなくなったというか、チームとして機能し始めました。それが一番、ながと戦で出たんじゃないでしょうか。とくにディフェンス面で」

 最後は力尽きたけれど、シリーズ第1戦の北九州大会から順位を2つ上げた。とくにながと戦の勝利は若い学生たちの自信になるだろう。古賀監督はこう、漏らした。

 「層の薄さが課題ですが、ステップアップしているとは思います。前回よりは」

 

 古賀監督と通路で話していたら、隣を樋口主将が通っていった。同監督は、主将をみながら、うれしそうに言った。

 「(樋口選手は)すごく成長していますね」

 

 ◆樋口主将「甘い部分が出ました」

 

 その言葉を樋口主将にそのまま伝えたら、「そう言われるのは、素直にうれしいです」と顔をくしゃくしゃにした。愛らしい八重歯がのぞく。

 昨年度までは、スタートメンバーとしてはあまり出場機会がなかった。でも、練習では人一倍、努力してきた。その成果だろう、体力が増した。主将となり責任感も。

 「自分自身はあまり大きく変わってないんですけれど、ま、走れるようにはなりました」

 ながと戦の決勝トライは?

 「たまたまです。みんなのおかげです」

 樋口主将はシーズン当初、開幕前記者会見ではこう、口にしていた。うちは小さい選手が多いので、組織力と運動量で戦っていく。新入生も加わった新たな日体大で日本一をめざしていく、と。

 言葉どおり、若いチームはぐんぐん成長している。今回は王者ながとを倒した。すごいじゃない、と言えば、「いえいえ」と苦笑いをつくった。

 「うれしかったですけれど、それがあとの試合につながらなかったので。詰めの甘さです。甘い部分が出ました。みんな、ちょっとボロボロで。ははは」

 確かに成長は実感している。でも、若いチームならではの課題もある。

 「ディフェンスの部分は結構、いい部分がみつかりました。あとはアタックの修正と、ディフェンスの細かいところを修正…」

 ひと呼吸おいて。

 「します」



 ◆スタンドを群青色に染める

 

 そういえば、今年度のスローガンは『翔』(ショウ)で、目標のひとつが『群青に染める』である。周りに愛されるチームになりたい、応援されるチームになりたい。スタンドを群青色の日体フラッグで染めたい、との狙いである。

 この日のスタンドでは日体フラッグが結構、目についた。明るい大内田選手の言葉が春風にのった。

 「もっとがんばって、スタンドを群青色に染めます!」

(松瀬学)



             

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