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松瀬 学

『ラグビーは一人じゃできない』

まっちゃん部長日記④ 2023年5月8日


 びゅーびゅー。強い風が吹き荒れます。6日の土曜日。健志台キャンパスのラグビー場で、女子セブンズ(7人制ラグビー)の練習試合が開かれました。紺色や黄色、だいだい色など、七色の紫陽花(あじさい)のごとく、カラフルなジャージが躍動しました。

 『情熱』。紺色の日体大のジャージの背には白色でこう、描かれています。太陽生命カップに向け、どの選手もからだ全体から明るい覇気がただよっています。空は晴れ。生温かい強風が地面を走り、枯れ葉を吹き上げます。


 選手たちの鋭い声が風に乗ります。

 「いけ~!」

 「早く出せ~」

 「前見て、前、前」

 「ナイス、ナイス!」


 その風の壁を前傾姿勢となり、頭で切り抜けようとします。ラン、ラン、ラン。日体大はこの日、初戦の横河武蔵野アルテミスターズには敗れたものの、続くPTS、ARUKAS KUMAGAYAには快勝しました。はやっ。畑田桜子さん(2年)がスキップを踏むように疾駆し、トライを量産しました。

 とはいえ、もちろん、周りの選手のがんばりがあればこそでしょう。タックルに入った選手、ブレイクダウンに入った選手、パスでつないでくれた選手、みんなのお陰です。

 やはり、ラグビーはひとりじゃできません。味方の選手だけでなく、相手チームがいれば、レフリーもいます。この日のレフリーは4人とも女性です。例えば、日体大の初戦の笛を吹いてくれたのが立ち姿も凛々しい牧野さんです。

 名前が「円」。「つぶら」と読むそうです。あの1964年東京五輪のマラソン銅メダリスト、円谷(つぶらや)幸吉のつぶらです。これも円、いや縁(えん)です。


 ということで、話を少し、聞きました。ジャーナリストの性です。すぐ話を聞きたくなるのです。「えらい、すんまへん、ちょっと教えてください」といった感じです。

牧野さん、ラグビーは4歳から始め、大阪教育大学からレフリーもし始めたそうです。卒業後、東京学芸大で修士を取得されました。「23歳からがっつりレフリー」だそうです。商社に勤務しながらレフリーをされています。

 ふむ、ふむ、で、楽しいですか? そう唐突に聞けば、「楽しいですよ」と笑顔です。「ピッチに立てるのも楽しいし、いろんな人に会えるのもうれしいですね。(女子ラグビー界は)ファミリーですよ。男子より結びつきが強いと思います。先輩がいる、後輩がいる、友達がいる、この場にいることが非常に楽しいです」

 レフリーから見ても、女子ラグビーの環境は改善されたそうです。練習試合でレフリーをすれば、幾ばくかの謝礼が出るようになりました。試合の数も増えました。「選手の成長も感じます。女子ラグビーのレベルが上がっているのは、毎試合、感じています」と言います。

 ところで、日体大は?

 「ニッタイさんはみんなラグビーをよく勉強していると思いますよ。チャレンジして、これはダメなんだとなるとすぐに対応できるのが強みでしょう。対応力が一番あるのがニッタイさんだと思います」

 余談ながら、夫もレフリーだそうです。レフリー夫婦とは。規則に厳しい家庭なのですか、と聞けば、冗談口調でおっしゃいました。

 「いや、いや。ただ、うちは家庭マネジメントが非常にやりやすいですね」

 ところで、ラグビー場の出入り口の通路には受付のように長い机が置かれ、いろんな検査機器がならべてありました。

 何かと思えば、NASS(日体大アスリートサポートシステム)のスタッフです。全部で6人。試合のフィットネスチェックや血液検査による生理的データを収集してくれているのです。これはチーム強化に効果を発揮します。

 黒色のiPadとにらめっこしている谷口耕輔さんにあいさつしました。日体大のハイパフォーマンスセンターのAD助教です。よろしく、お願いします、と。

 で、また、ストレートに聞きました。「ねえ、ねえ、オモシロいですか?」と。

 真面目な谷口さん、ちょっと戸惑いながら、「そうですね、オモシロいですよ。苦労は多いですけど」。

 試合直後、心拍数や血中乳酸濃度やらなんやらかんやらを調べます。実はよくわかりませんが、血液で疲労度などを確認してくれるのでしょう。選手にはGPSも付いています。

 谷口さんが簡単に説明してくれます。

「データを科学的に読み解いて、どう選手にフィードバックするのか、です。それがチームの強化に役立つのが励みです。チームの課題がわかり、さらに前に進むことにつながっていくことが楽しいですね」

 この日の試合が終わりました。出口で谷口さんにお礼を言えば、こちらも満面笑顔でした。


「貴重なデータがとれました」

 余談をいえば、僕の血中アルコール濃度は,チュウハイのそれよりも濃いのです。たぶん。


 ラグビーはひとりじゃできません。いろんな人のサポートがあればこそだな、とつくづく思うのです。(松瀬学)

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