top of page
nittaidai

『メリー・クリスマス! 日体大女子が劇的勝利でリーグトップへ』

まっちゃん部長日記⑫【日体大対横浜TKM】


 しあわせなクリスマス・イブです。まるで「勝利」のプレゼント袋を背負った赤い帽子のサンタクロースが、“がんばり屋”の日体大ラグビー部女子のところにやってきたようなものです。ノーサイド。スタンドに陣取ったラグビー部の男子部員が素っ頓狂な大声を発しました。「メリー・クリスマスッ」。笑い声が流れます。

 

◆日体大が死闘制す。古賀監督「大きな、大きな、勝利です」

 

 12月24日、調布市の府中朝日フットボールパーク。15人制の関東女子ラグビー大会『OTOWAカップ』。全国大会準決勝進出への生き残りをかけた3勝1敗同士の対戦は死闘となりました。ロスタイム、日体大が劇的な決勝トライで横浜TKMを24-17と下し、勝ち点を19に伸ばしてリーグトップに躍り出ました。

 スタンドには、先週、関東大学対抗戦1部復帰を決めた日体大ラグビー部男子の秋廣秀一監督ほか、部員が大挙して応援にかけつけてくれました。先週の入れ替え戦のお返しといったところでしょう。寒波襲来、でも雲ひとつない青空の下、「ニッタイダイ! ニッタイダイ!」との掛け声と手拍子がずっと鳴り続けていました。

 学生クラブならではの光景でした。日体大女子の古賀千尋監督は試合直後、男子部員のグループのところまで来て、笑顔で頭を下げました。「みんな、ありがとね」。そして、こう、しみじみと漏らしました。

 「みなさんのお陰です。応援、素晴らしかったです。大きな、大きな、勝利です」



◆信頼の決勝トライ。「ほって」「ねえさ~ん」

 

 試合のロスタイムは3分です。スコアが17-17でした。相手ボールのスクラムから、横浜TKMが強力な元フィジー代表の選手を軸として攻め続けます。小柄な日体大はタックル、タックル、またタックル。笛が鳴ります。ペナルティーです。

 まだ、試合が続きます。日体大が中盤から最後のアタックを仕掛けます。右に左に大きく展開します。右ライン際のポイントから、ラックサイドをフランカーの持田音帆莉(ねおり)が持ち出しました。後半途中から交代で入った日本代表のOG、「ネエさん」こと、頼りになる堤ほの花が左サイドから声を出します。

 「ほって」

 堤がスペースを突いて、ビッグゲインします。タックルを受ける瞬間、左サイドから勝負師のCTB新野由里菜・共同主将が大声を発しました。

 「ねえさ~ん」

 信頼をのせたボールがオフロードパスで新野主将にわたりました。新野が脱兎のごとく、一目散に走ります。そういえば、今年はウサギ年。年が暮れていきます。走る、走る。ざっと20メートルを走り切り、インゴールに飛び込みました。

 決勝トライです。新野主将がゴールキックを蹴り込みました。24-17です。右こぶしを突き上げながら、仲間のところに駆けてきます。もちろん、笑顔で。

 ノーサイドです。歓喜の爆発。裏方に回ったウォーターボーイ(水係)の松田凛日も、ベンチの控え選手も、スタンドのノンメンバーも、泣いていました。男子部員も立ち上がって絶叫していました。「やったぁ~」「かったぁ~」「にったいぃぃぃ」



◆「スター・オブ・ザ・マッチ」の堤「ホッとしました」

 

 試合の「スター・オブ・ザ・マッチ」(最優秀選手)に選ばれた堤は試合後、「久々の15人制ラグビーができて楽しかったです」と声を弾ませました。

 「最後、10分ぐらいしか出ていませんが。自分の責任をまっとうしようと思ってプレーしました。(決勝トライの場面は)イケると思って。新野の必死な声が聞こえてきて。“お願い”と思いながら、ボールを渡しました」

 ひと呼吸、つきます。北風がピュ~とほおをなでます。

「ホッとしました。あ~、勝ってよかった。勝ち切れて、次につながれてよかったなって思います」

 新野主将も、「最高で~す」と笑顔です。

 「最後、レフェリーの“ノータイム”の声がかかっていたので、もう必死でした」

 「よく走り切りましたね」と声をかければ、「足がつっていました。“オニださ”かったでしょ」とこぼします。

 オニださ、とは?

 「ははは。トライの仕方がオニださ、鬼のようにださかったという意味で~す」

 

◆とってとられての激闘「Be Powerful」

 

 この日の試合のテーマは、今季のチームスローガンの「Be Powerful」です。ポイントは、「セットピース」「外国人対策」「ペナルティー」の3つでした。スクラムで押す、ラインアウトで優位に立つ。強力な3人の外国人を猛タックルで食い止める。走らせない。そして、不用意なペナルティーは犯さない、です。

 前半、小牧日菜多(ひなた)共同主将、根塚智華(ちはる)、牛嶋菜々子のフロントロー陣がスクラムで踏ん張りました。バック5(ロック、フランカー、ナンバー8)も結束して重圧を前に推しました。タテに伸びたいいシルエットのスクラムでした。

 ただ、コリージョン(接点)ではやや後手を踏んでいました。相手に先制トライをとられましたが、からだを張ったロックの村瀬加純がトライを返しました。その後、トライを与えましたが、スクラムの左オープンのサインプレーからCTB畑田桜子(さくらこ)が鋭利するどく走り切り、逆転トライを決めました。12-10で折り返しです。

 後半、開始直後にトライを奪われてしまいます。相手の元フィジー代表のエースがイエローカード(10分間の一時退場処分)を食らいました。数的優位に立ちましたが、トライがなかなか取れませんでした。激突が続きます。新野主将がみぞおちをしたたかに打って倒れました。執念です。歯を食いしばって、ふらふらと立ち上がり、試合に戻りました。

 後半30分。日体大はラインアウトからのドライビングモールをぐりぐり押し込んで、最後はフッカーの根塚が同点トライを挙げました。ここから、激しい攻防がつづきました。すぐそばの航空自衛隊の府中基地から白い飛行機が真っ青な空に飛び立っていきます。

 

◆小牧共同主将「ココロの底から負けられへん」

 

 共に死力を振り絞っての激闘でした。

 スクラムで、フィールドプレーで奮闘した小牧共同主将は、「がんばりました」と言葉に充実感を漂わせました。

 「とって、とられての試合だったんで。個人的には、去年卒業の先輩がTKMにいたので、ココロの底から負けられへんと思っていました。でも、まだ次があるので、その試合に全精力を持って行きたいです」

 

◆古賀監督「粘り勝ち」

 

 古賀監督は顔に安堵感が漂っていました。

 試合をひと言でいうと、と聞けば、こう応えてくれました。

 「粘り勝ちじゃないですか」

 この前の試合(12月10日)の東京山九フェニックス戦では、後半、敵陣にいってもトライがなかなかとれず、苦杯を喫しました。だからこそ、接戦を制しての勝利は勝ちがあります。よく同点に追いつき、勝負の流れをつかみました。メンバー交代が当たりました。

 「やはり、リザーブ組で勢いづきました。苦しい試合を勝ち切るのが前回できなかったので、今日はそれがやれてよかったです」



◆次戦、勝てば、文句なしで全国大会準決勝進出

 

 これで日体大は4勝1敗の勝ち点19のリーグトップです。

 次が年明けの6日、上柚子公園陸上競技場次戦で、リーグ最終戦の横河武蔵野戦となります。ここで3トライ差以上の勝ちでボーナスポイント1を獲得すれば、関東大会優勝となります。ただ負ければ、スコア次第では、全国大会準決勝には進めなくなります。

 要は、日体大が勝てば、文句なしで全国大会に進めるのです。

 さ、みなさん、サンタさんにプレゼントをお願いしましょう。

 もういっちょ、勝利をくださ~い。(松瀬学)

閲覧数:336回

最新記事

すべて表示
bottom of page