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『またもミラクル! 最終4位も、ニッタイのラグビーには“夢”がある』

まっちゃん部長日記➂7人制太陽生命シリーズ鈴鹿大会


 “ニッタイ”のラグビーには夢がある。学生らしく、全員でつないで走って、ひたむきにタックルする。『太陽生命ウィメンズシリーズセブンズシリーズ』第3戦、鈴鹿大会の準々決勝。まだ成長途上の日体大ユニコーンズが、強豪の横浜TKMを21-12で破る番狂わせを演じ、スタンドのラグビーファンを沸かせた。

 新緑のにおい漂う三重交通Gスポーツの杜鈴鹿サッカー・ラグビー場だった。まさに「チーム」は「個」より強し、である。ラグビーにおいて「ひたむきさ」とはみんなの宝物なのだった。


 

 ◆結束のラベンダー体操

 

 GW(ゴールデンウィークならぬ、がんばるウィーク)の最終日の6日である。朝。日体大はアップ場で、大学の授業でよくやる『ラベンダー体操』をみんなで一緒にやった。この体操は笑顔で踊ることがポイント。一緒にぴょんぴょん、一緒にのびのび、リズムにのって一緒に屈伸する。主将の樋口真央が、「疲労をとるのにはちょうどいい体操なんです」と楽しそうに教えてくれた。

 「北九州大会の2日目の第1試合目にみんなのからだが動いていなかったので、何か工夫して柔軟体操をすることにしたんです。で、“ニッタイなら、ラベンダー体操でしょ”って。みんなで信頼深めて、もうひとつになってやるしかないっていう気持ちになるんです」

 

 ◆気力充実の試合入場

 

 準々決勝は午前10時過ぎのキックオフだった。相手が、前日の1次リーグで完敗(●0-17)した横浜TKMで、今季は3戦全敗と圧倒されていた。でも、この試合の選手入場の際、日体大のマインドセットは相手をしのいでいた。そう見えた。通路で並んでいる時からひと固まりとなり、気迫がみなぎっている。気力充実。「これはイケるかも」と感じたものだ。


 

 ◆樋口主将「チームがひとつになって挑んで勝ち切れました」

 

 開始直後、ハンドリングエラーから相手ボールのスクラムを組まれ、先制トライを許した。だが、すかさず反撃。敵ゴール前の5メートルスクラムから高橋夏未選手が長いパスを1年生の逸材、谷山三菜子選手に送り、谷山がディフェンスラインを外に少し引っ張りながら、タテに切り込んできた畑田桜子選手にパス。畑田選手がハンドオフでタックラーをはじき飛ばして、中央に飛び込んだ。

 谷山のドロップゴールも決まって、あっさり逆転した。その後は、ディフェンスが「面」となって相手の攻撃をよくしのいだ。攻めては、グラウンドを大きく広く使って、ボールを継続してつないでいった。

 風上の後半1分過ぎ、ラックの左サイドを高橋夏未選手が突いて、ハンドオフしながら、いいタイミングで樋口主将につなぎ、その主将が約60メートルを走り切った。さらに5分後、今度は高橋夏未選手が約50メートルを駆け抜けてトライした。



 勝利を呼んだ隠れたファインプレーは、後半の中盤だった。畑田桜子だ。懸命の戻りから、元ニュージーランド代表の相手エース、アカニシ・ソコイワサをゴール直前で倒した執念のタックルはいぶし銀の輝きを放った。

 21-12でノーサイド。からだを張った樋口主将のヒタイには真っ赤な擦り傷の跡があった。「ははは。頭、ぶつけました」と笑って、主将は言葉に実感をこめた。「チームがひとつになって挑んで勝ち切れました」と。


 

 ◆保護者も感激「娘の成長に驚かされます」

 

 番狂わせに観客席も興奮気味だった。とくに日体大の保護者は濃紺と白色のダンガラ模様の小旗を打ち鳴らしながら喜んだ。

 三重が地元となる樋口主将の父親は、「娘たちの日々の成長には驚かされます」と感激顔だった。「ここぞという時の結束力、チームの底力がすごい。(自分の)地元でこんな試合をやらせてもらえるのはしあわせですね」

 梅津悠月選手の応援に山形から母親と駆け付けた父親は、ケガから復帰したばかりの頑張り屋を気遣いながらこうエールを送った。

 「心配です。でも、ラグビーはチームプレーだから、からだが壊れても、精一杯走ってほしいです」

 

 ◆“ねえさんスキル”でディフェンス奮闘

 

 セブンズの大会はハードである。準々決勝の2時間半後に準決勝を戦う。日体大はここで、強力外国人を主軸とした東京山九フェニックスに7-31で完敗した。

 気落ちしている余裕はない。その2時間後、日体大は3位決定戦で地元の強豪・三重パ―ルズと戦った。ここも強力な外国人選手を擁している。

 日体大はとくにディフェンスでがんばった。日本代表の先輩、堤ほのか選手の堅いディフェンスの仕方を研究して、束になってエースのケニア出身、ジャネット・オケロをうまく抑えていた。古賀千尋監督の言葉を借りると、「ねえさん(堤選手)スキル」というらしい。



 古賀監督の述懐。

 「ディフェンスがよかったですね。ねえさんの動きをみんなで研究して、それが生きていました」

 勝負のアヤをいえば、前半の終了間際の攻防だった。スコアは7-7の同点。両チームともトライをもうひとつ、ほしい。意地と意地。プライドとプライドがぶつかる。

 PKをもらっても、相手のボールを奪取しても、ゲームを切らず、攻め続ける。電光掲示の数字はもう、10分(通常はハーフタイム7分)を過ぎていた。最後、タックルをはずされ、オケロにトライを許した。

 

◆成長示した2年生の高橋夢来選手、1年生の谷山三菜子選手「おもしろいです」

 

 これで勝負の流れはほぼ決まった。後半にも2トライを奪われ、7-24で屈した。それでも、みんなからだを張った。とくに、向來桜子選手(3年)、成長を示した高橋夢来(ゆらら)選手(2年)のがんばりは見る者に感動を与えただろう。

 加えて、新1年生の谷山三菜子選手(佐賀工業高卒)の奮闘である。ラグビーセンス、才能は文句なしだ。試合後、大学の試合はどうですか?と聞けば、「おもしろいです」と表情がパッと明るくなった。

 「先輩たちがやさしくて、だいぶ、チームになれてこられて、自分のプレーも少しずつ出すことができてきていますから。もっとチームに貢献できるようなプレーが、アタックでも、ディフェンスでもできるよう、もっと頑張りたい。とくに前に出る推進力をつけていきたいなと思います」


◆古賀監督「大満足です」

 

 グラウンドの隅の芝に日体大の選手たちが車座になって座り込んでいる。さっそく試合直後のミーティングがはじまった。選手同士で、いいところ、改善すべきところを言い合う。未来の栄光のために。

 樋口主将は言った。

 「チームの成長を実感している部分はあるんですけれど、結果につながっていませんから…。次は優勝して、みんなで表彰台にのぼりたいです」

 古賀監督はといえば、大会を総括する口調が明るかった。「大満足です」と笑った。

 「そういうと、ちょっと問題あるかもしれませんけど…。最後も、成長を感じられた試合でした。大会を通し、アタックはハンドリングエラーが多かったですけれど、ディフェンスにはニッタイらしさが出たと思います。とくに高橋夢来ら、これまでリザーブだった選手が成長しました。それがうれしい」

 鈴鹿からの帰途。古賀監督より、こんな言葉をLINEでもらった。

 「少しずつでも成長している選手たちを誇らしく思っています。最終戦(花園大会)、頑張ります」

 

◆夢のカケラを集めて

 

 ところで、試合後の選手たちの言葉を聞けば、時折、自分の大学時代の熱を思い出すことがある。保護者の方からこう、尋ねられたことがある。いつもロッカールームの外で何をしているのでしょうか、と。

 僕は東京ディズニーランドのカストーディアルキャスト(清掃担当スタッフ)を真似て確かこう、応えたのだった。

 はい。若者の夢のカケラを集めています、と。

                               (松瀬 学)



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