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「日体大女子が“らしく”、いきいき継続。立正大に完勝」

まっちゃん部長日記

 

 これぞ大学スポーツの理想だろう。男子部員の応援を受けて、日本体育大学ラグビー部女子がいきいきと躍動した。日体らしい「継続ラグビー」で7トライを奪い、立正大アルカスに48-10で完勝した。

 やっぱり晴れた11月23日の勤労感謝の日だった。日体大の横浜・健志台キャンパスのラグビーグラウンド。『OTOWAカップ 関東女子ラグビー大会』の第3戦。午後2時にキックオフされた。気温がぶるぶる寒い9度。冷たい強風が吹き、スタンドの男子部員は肩をすぼめていた。でも、熱のこもった声援がとぶ。

 「ニッタイ、ニッタイ、ニッタイダイ!」


 

 ◆群青に染める。古賀監督「とっても、うれしいですね」

 

 今年度のチームスローガンが『翔』、そして活動目的は『群青に染める』である。成績はもちろんながら、今年度はさらに周りから応援されるチームになり、観客席を日体カラーの群青色に染めることをめざしているのだった。



 スタンドの男子部員や保護者、ファンは、群青色の小旗をばたばた振ってくれていた。そのスタンド風景を眺めた古賀千尋監督が幸せそうにぼそっと漏らした。

 「群青色の旗が目について、とっても、うれしいですね」

 スタンドに父親と座っていたちっちゃな女の子がこう、叫んだ。

 「青~、がんばれ~」

 

 ◆低くてまとまったスクラムで圧倒。峰愛美「自信ができました」

 

 中5日。前節の試合は、YOKOHAMA TKMに敗北した。序盤に先制トライを奪われ、チームの主導権を与えてしまった。セットピース(スクラム、ラインアウト)、ブレイクダウンでやられ、ハンドリングミスも続発した。

 でも、この日はちがった。前半5分の相手ボールのファーストスクラム、中盤での2本目のスクラム、日体大は8人が低く結束して一気に押した。大相撲でいえば、電車道。相手のコラプシング(故意に崩す行為)の反則を誘った。

 左プロップの“元気印”、峰愛美が述懐する。

 「序盤のスクラムでイケたので、自分たち、自信ができました」

 峰によると、前回の敗戦後、スクラムのスポットコーチ、山村亮さんから修正ポイントが入ったそうだ。もっとセットアップでまとまる。フロントロー、バックファイブ(両ロック、ナンバー8)のひざを低くして、FW8人で結束して組め、と。

 風下の前半はほとんどが敵陣だった。ラインアウトは序盤、うまくいかなかったけれど、試合の進行とともによくなっていった。攻めにニッタイらしいリズムが生まれる。FWが前に出て、生きたボールを出す。蹴っては、ボールを奪回し、継続して攻める。



 主将のフランカー、樋口真央が八重歯をのぞかせ、笑顔で振り返る。

 「前の試合は“入り”が課題だったので…。前半、ちょっと苦しんだんですけど、先に自分たちのペースに持ち込めたんで、よかったです」

 

 ◆継続ラグビー。大内田「自分たちがやりたいことができました」

 

 前半30分過ぎ、ラインアウトから展開し、ナンバー8の向來桜子がラックサイドを突破。タイミングよい球出しをSH山本彩花がさばいて左オープンへ。SO大内田夏月がロングパスをWTB梅津悠月につなぎ、左隅に飛び込んだ。

 天真爛漫の大内田が顔をほころばす。長い黒髪が揺れる。スタンドには、福岡から応援に駆け付けた母親の姿もあった。

 「先週の試合は自分自身がテンパちゃって、ははは。今日は落ち着いて冷静にプレーすることができました。いいキックも何本か蹴られました。チームとしても、自分たちがやりたいことができてよかったです」



 今日の試合のキーワードは『継続』か。

 「前に出て、ボールを動かし続けようというのがあって。それは結構、できたんじゃないかと思います。FWがごりごり、フィジカル的に勝ってくれて。FWが前に出たところで、バックスがボールをもらえたので、テンポがよくなりました」

 個々のタックル、ディフェンスもよく、前半は8-0で折り返した。



 SH山本彩花もFWに感謝する。澄んだどんぐりマナコがキラキラだ。

 「みんな勢いがあってよかったです。フォワードが前に出てくれたので、こっちもボールをさばきやすかったです」

 


 ◆後半にトライラッシュ。足がつった水野「最後はもう限界でした」

 

 風上の後半、日体大らしい攻めが炸裂した。

 序盤、立正大アルカスにトライを返されたが、すぐに連続攻撃を仕掛けていく。後半8分、ラインアウトから左右に展開し、WTB梅津が左ライン際を快走し、フォローしたCTB水野がトライした。これで勢いづいた。ナンバー8の向來、ロックの村瀬加純、キレキレのSO大内田、途中交代でプロップに入った八尋瑛、途中交代のナンバー8江尻栞那が、次々とトライを重ねた。後半は大量6トライと畳みかけた。ボーナスポイント(4トライ以上)もゲットした。



 この日もチーム事情は苦しく、通常8人のリザーブには5人しか登録できなかった。その分、一人ひとりが走り続けるしかない。寒さもあっただろう。終盤、足がつりそうな選手が相次いだ。最後は、水野が、ピキッとつった右足でボールをタッチラインの外に蹴り出して、ノーサイドとなった。水野が痛みをこらえながら笑う。

 「最後は、もう限界でした。それだけ、走り回ったんです。蹴る動作に入った瞬間、“あっ”となっちゃった」

 水野もまた、この試合に汚名返上をかけていた。

 「TKM戦に負けちゃったから、この試合にすごくアツくかけていたんです。アップ前から、みんな、気合が入っていました」

 


 ◆古賀監督「ようやく、ニッタイらしい試合ができました」

 

 スタンド上段の管制室。

 試合が終わると、古賀監督は安どのため息をついた。

 「ようやく、ニッタイらしい試合ができました。前回は、フラストレーションがたまる試合だったので。今日は、試合を通じて、自分たちのやりたいラグビーができました」

 選手たちの成長は?

 「蹴って、追って、奪い返して、アタックを継続できたことでしょうか。ラインアウトからもそうですけど、継続に成長を感じました」


 

 ◆エクボの西村澪「びっくりです。うれしいです」

 

 最も活躍した選手に贈られる、試合の『スターオブザマッチ』には、攻守にからだを張ったロックの西村澪が選ばれた。受賞のご気分は? と聞けば、エクボをつくって、顔をくしゃくしゃにした。

 「びっくりです。うれしいです」



 それにしても、タックルもがんばっていた。

 「はい。タックルする場面がたくさんありました。そのところで、しっかり相手を止めることができてよかったです。相手を敵陣に封じ込めることができて。ボールを奪い返すこともできました」

 FWはスクラムで押し勝ち、ラインアウトでも前回よりかは大幅に改善された。みんながんばった。とくに両ロックの働きが大きかった。

 チーム内表彰の『ゴールドシール』は、フッカー根塚智華とFB松田奈菜実がそれぞれゲットした。おめでとさ~ん。


 

 ◆樋口主将「これからも勝ち切っていかないといけません」

 

 まだ戦いはまだつづく。

 樋口主将は短く言った。

 「これからも、勝ち切っていかないといけません」


 

 それにしても、男子部員の応援はうれしい。ありがたい。

 大内田に聞いてみた。励みになりますか?

 「めっちゃ、なります、はい、なります」

 

 余談ながら、試合終了30分後、スタンドの陰で、数人の男子部員が、戦い終えた女子部員たちに差し入れをこっそり渡していた。ほのぼのとした空気が漂う。いいなあ。青春というか、若々しいというか、なんというのか、僕は純情を感じたのだった。



(筆:松瀬学/写真撮影:善場教喜さん)



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