まっちゃん部長日記@府中朝日FBP
ああ寒さが身に沁みる。関東にも寒波襲来。冷たい風に枯れ葉が舞う中、日本体育大学ラグビー部女子は、流通経済大学の「RKUグレース」に敗れた。ああ…。
ラスト2分でやっとワントライを返したけれど、5-17で試合終了と相成った。大学生同士の試合らしく、ともに「ひたむき」、ともに「必死」。両者の意地とプライドがぶつかる激闘だった。見ているおっちゃんの胸も熱くなる。

勝ったグレースの喜びようといったらなかった。よほど、この試合に懸けていたのだろう。しかし、負けた日体大とて最後まで、相手に挑みかかる気概、集中力は切れていなかった。保護者や観客の支持はつかんだ。
日体大の古賀千尋監督は、ロッカー室へ引き揚げるグレースの選手たちにこう、明るく、声を掛けた。
「お疲れ様です。ナイスゲーム!」
そして、こうつぶやいた。
「よきライバルですね」
◆古賀監督「大きいですね。痛いです」
12月8日の日曜日。サッカーや少年野球、ラグビーなど、たくさんのスポーツイベントが開催されていた府中朝日フットボールパークの一角、緑の天然芝がひろがるラグビー場。京王線の飛田給駅から徒歩20分。遠い。JリーグのFC東京のファンでごった返す道路を細かくステップ踏んで、ラグビー場にたどりついた。
15人制ラグビーの『OTOWAカップ 関東女子ラグビー大会』の第4戦。日体大はこれで2敗(2勝)を数えることになった。「痛い敗戦ですか?」と聞けば、古賀監督は小声で応えた。
「(この敗戦は)大きいですね。はい。痛いです」

ライバルのグレースは、「イズム」(自分達らしさ)に徹してきた。
強みがセットピース(スクラム、ラインアウト)とコリジョン(接点)勝負。対する日体大はやはり「チームワーク」でつなぎ、走り勝とうとした。フォワードは健闘した。前半終了間際にはスクラムで相手のコラプシング(故意に崩す行為)の反則を2つももぎ取った。加えて、みんなディフェンスでもからだを張った。
風上の前半、日体大はタックル、タックル、またタックル。気迫のナンバー8、向來桜子、闘志の塊、フランカー樋口真央キャプテン、フランカー持田音帆莉、ロックの村瀬加純…。見ていて、胸が苦しくなる。

でも、数少ないアタックチャンスでは、相手の鋭いプレッシャーに気圧され、ハンドリングミスを繰り返した。樋口主将は試合後、途切れがちに言葉を継いだ。
「やってて、自分たちのミスばっかだったんで。勝てない内容でした」
ハーフタイムは、0-0で折り返した。

◆活躍の向來「学生同士の意地のぶつかり合いだった」
後半、グレースは自分たちの強みを前面に出してきた。
PKをもらえば、タッチに蹴り出し、ラインアウトからドライビングモールで押し込んでいく。ブレイクダウンでは、束となって圧力をかけていく。ライン際のそれで、何本かのターンオーバー(攻守交替)を許した。
実は苦しい日体大のチーム事情もある。けが人に加え、日本代表遠征もあって、試合の登録メンバーは規定の23人より4人少ない19人。グレースよりも2人少なかった。つまり、交代選手の層が薄かった。選手交代は、相手の5人に対し、1人だけだった。
グレースにラインアウトからモールをつくられ、ブレイクダウンからのサイド攻撃を重ねられて、パワーで2本のトライを奪われた。
日体大は後半38分、ようやく、日体大らしいオープン攻撃から左右に揺さぶり、スタンドオフの大内田夏月が左ライン際のWTB江尻栞那にロングパスをつなぎ、そのまま左隅にトライした。

この日もからだを張り続けたナンバー8の向來は言った。言葉に悔しさがにじむ。
「自分たちのアタックができないまま、相手を波に乗らせてしまいました。自分たちの強みのディフェンスをする前に、相手のコリジョンで持っていかれてしまって…。やっぱり、自分たちで修正できなかったところが、あれ(敗因)かなと思います」
それにしても、向來のタックル、ジャッカルは凄まじかった。そう言えば、ナンバー8は、「本当ですか?」と少し笑った。いつも、めげない。
「ええ、学生同士の意地のぶつかり合いでした。もうちょっと、走りたかったな」

◆MIP受賞の大内田夏月「課題を修正して、次はもっと頑張りたい」
ライバルのグレースの存在はありがたい。
学生同士として切磋琢磨してきた。15人制ラグビーでいえば、2021年では日体大が敗れ、2022年、2023年と日体大が連勝していた。
今年の夏合宿の練習試合では互角だった。でも、10月の練習試合では日体大がぼろ負けした。古賀監督は、「夏合宿から、そこまで(10月の練習試合)の期間の過ごし方にチーム全体として甘さがあったと感じています」と話した。
「こういうもの(チーム力)って積み重ねてナンボじゃないですか。日体大は、そこ(10月の練習試合)でやっとスイッチが入ったんですけど…。ちょっと遅かったですね。」
そして、ひと呼吸ついた。
「同じ大学生だけど、自分たちが見習わないといけないところがたくさんありました」

試合の『Most Impressive Player(MIP)』に選ばれたSOの大内田は悔しくて泣いていた。グラウンドでの受賞インタビューでは涙声だった。
「課題を修正して、次の試合ではもっと頑張りたいです」

◆古賀監督「次は、ワクワクするようなラグビーを」
課題はまず、規律の徹底とプレーの精度か。
課題を克服し、日体大イズムを取り戻せるか。チームでつないで、つないで、ラインブレイクできるのか、である。
この日の日体大のオープン攻撃からはトライのにおいがあまりしなかった。

次の試合は14日(上柚木)、相手がFWに日本代表選手が並ぶ横河武蔵野Artemi-Starsとなる。
古賀監督は明るく言い放った。
「自分たちらしいアタックで、見ていてワクワクするようなラグビーをたくさんしたい。選手たちもやっていて、楽しいなと思えるような」
いいぞ、いいぞ。
そうだ。日体大には、テンポのいいアタックで、相手に走り勝つラグビーが似合っている。今年のヒット曲、クリスピーナッツの『Bling-Bang-Bang-Born』のようなリズムで。
(筆:松瀬学/撮影:善場教喜さん)