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まっちゃん部長日記

まっちゃん部長日記⑧2023年7月24日


 ◆胴上げの古賀監督「うれしかった」


 アツい、アツい、アツい大学日本一である。女子7人制ラグビーの大学交流大会「Women’sCollege Sevens 2023」が23日開かれ、日体大が決勝で東京山九フェニックスを19-12で破り、2連覇を果たした。暑さにめげず、全員で明るく元気でひたむきなラグビーで頂点に立った。


 日中の最高気温は35度。猛烈な暑さの埼玉県熊谷市の立正大グラウンド。周りの木々のセミしぐれの大合唱の中、日体大の古賀千尋監督が5度、宙に舞う。

 「(胴上げは)こわかったけど、うれしかった」と古賀監督は言い、笑顔でこう続けた。

 「やっとでナンバーワンになれました。太陽生命で自分たちはやれるという自信は持っていましたけれど、ただ優勝には至らなかったので…。それを手にできてよかったんじゃないかなと思います」


 そうなのだ。社会人クラブを含めて戦う国内最高峰の「太陽生命ウィメンズシリーズ」(全4戦)で、日体大は準優勝、準優勝、準優勝、3位の総合2位と大健闘した。でも、優勝には一度も届かなかったのだった。


 ◆涙の新野主将「一番いい形で終われたのでよかった」


 古賀監督の視線の先には、グラウンドで選手たちが記念撮影に興じていた。試合を陰でサポートしてくれた部員たちも一緒になって歓喜の輪をつくる。不思議な一体感、笑顔がはじける。

 いつもの決めポーズ。みんな笑って人差し指を立てる。ハイ、声を合わせて。

 「ユニコーンズ、ナンバーワンッ!」

 もう疲労困憊。からだを張った新野由里菜主将はふらふらだった。7人制ラグビーシーズンを締めくくる大会。「最後」と漏らすと、目から涙があふれ出した。涙声でつづける。

 「全員で頑張ってとれた優勝だと思います。うれしいです。本当に自分たちが学生のナンバーワンであることを見せることができました。一番いい形で(セブンズシーズンを)終われたのでよかったと思います」

 その涙のワケは? ホッとしたの?と聞けば、新野主将は泣きながらうなずいた。



 ◆相次ぐ逆転勝利で決勝戦へ

 

 太陽生命シリーズで結果を残しながらも、日体大の布陣は盤石ではなかった。日本代表の松田凛日、堤ほの花、高橋夏未ら10人が合宿や遠征などで抜けていた。海外から帰国したばかりで時差ボケの残る向來桜子、大内田夏月、畑田桜子を今大会に起用せざるを得なかった。

 23日の決勝トーナメント。初戦の準々決勝の流経大「RKUグレース」戦も、続く準決勝の日本経済大学戦も相手チームに先制された。いずれも前半は7-12のビハインドで折り返した。でも、日体大は慌てない。ここに、チームの自信と成長の跡がみえる。

 そういえば、準決勝のハーフタイム。円陣で、負けじ魂の固まりの向來が叫んだ。

 「太陽生命2位なんて関係ないよ!」

 向來は、チームの奮起を促したのだった。試合後、その言葉の真意を聞けば、向來はこう、説明してくれた。「太陽生命で総合2位になったからって、どこにも簡単に勝てるわけじゃないよって言いたかったんです。まだ1位にはなったことないんだから、必死になってやらないと、試合には勝てないよって」と。

 日体大は結局、後半、猛反撃し、RKUグレースに19-12で、日本経済大学には28-12で逆転勝ちした。いずれも、後半は無失点、日体大ならではの集中力と「堅守」が光った。これは厳しい練習のたまものだろう。


 ◆酷暑の決勝戦。チーム一丸の粘り勝ち。


 決勝のフェニックス戦は、最も陽射しが厳しい午後2時過ぎにキックオフだった。大内田は体調不良で欠場した。でも、チーム一丸。

 前半の中盤。攻められての自陣から、黒色ヘッドキャップの新野主将がスペースを突き、一気に70メートルほど走り切った。先制トライ。その1分後、中盤で向來が暴れてビッグゲインし、つないで、樋口真央が中央に飛び込んだ。

 後半、相手に2トライを許すも、中盤、相手がこぼした低いボールを高橋沙羅が瞬時に拾ってゲインし、回して、新野のトライにつなげた。19-12で競り勝った。苦しんで、苦しんでの、粘り勝ちだった。


 ◆効果発揮した暑さ対策


 1日の試合数が多い7人制ラグビーの大会はタイムマネジメントが大切な要因となる。加えて、炎天下の大会ゆえ、選手のコンディショニングと暑熱環境における熱中症対策もポイントだろう。

 古賀監督に聞けば、日体大は大学のスポーツ推進の中核を担う『アスレチックデパートメント』の『日体大アスリートサポートシステム(NASS)』の支援を受け、水分、塩分などの補給で対策を練っていた。また、よく見れば、試合中、じょうろに氷水を入れて、ひんぱんに選手の手の平や両手、両足などを冷やしていた。




 古賀監督が説明する。

 「深部体温をあげないためです。手の平には毛細血管があるので、そこを冷やすと意外と体温が早く下がるのです」

 古賀監督もトレーナーも選手のコンディション維持には最大限の気を配る。試合が終われば、体温を下げるため、テント下やクーラーが効いたロッカー室への移動を急がせた。

 いわば、そういった暑さ対策もあっての、総合力の優勝だったわけである。



 ◆たくましい成長「次は15人制で」

 

 チームの成長でいえば、15人制ラグビーの練習から継続してきたコリジョン(接点・衝突)強化が実ったようだ。コンタクトエリアでは、ボールキャリアに両サイドが走り込む。ブレイクダウンの改善が、日体大の走ってつなぐ『ランニングラグビー』にリズムをつけた。

 もちろん、ベースは個々のタックル、チームのディフェンス網の向上があればこそ。勝因をひと言でいえばと聞けば、古賀監督はしばし、考え込んだ。

 「堅守速攻…と言いたいけれど、速攻があまりなかったので、堅守の勝利ですか」

 ひと呼吸おいて、こう続けた。言葉に充実感がにじむ。

 「この優勝で弾みをつけて、15人制(シーズン)に向かいたい」

 まだ成長過程。つくづく学生スポーツとは人間である。見ているこちらの胸もつい熱くなる。われわれは、新芽のごとき、若者たちのたくましい成長を見ているのである。(松瀬学=スポナビから転載)



 【余談】不肖・松瀬も、学生たちに胴上げしてもらいました。随分と逃げ回ったのですが、結局、わたしのラッキーナンバーと同じく3回。恥ずかしいやら、うれしいやら。胴上げされたのは、結婚式以来、約40年ぶりの事でした。正直にいえば、天にも昇る心持ちでした。みなさん、ありがとうございました。

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まっちゃん部長日記⑦2023年7月4日


 ◆個人の成長とチームの進化

 

 これぞチームプレーの輝きか。7人制女子ラグビーの年間王者を決めるシリーズ最終第4戦・花園大会最終日が2日行われ、日本体育大学が3位と健闘し、総合2位を決めた。学生ならではの全力プレーから、「個人の成長」と「チームの進化」が見てとれた。

 炎天下の東大阪・花園ラグビー場。陽射しが傾く中での表彰式では選手たちに笑顔がひろがった。ノーサイド。互いの健闘をたたえる。日体大は記念撮影の際、みんなでこう叫び、人差し指を立てた。

 「ユニコーンズ、ナンバーワン!」

 ユニコーンズとは日体大の愛称である。ユニコーンは伝説の一角獣を意味し、唯一無二の存在を指す。確かに優勝はできなかったけれど、ラグビーらしいチームの完成度としてはナンバーワンだったかもしれない。



 ◆新野主将「めちゃくちゃ楽しかった」


 日体大の選手たちの顔には、自分たちのラグビーをやり切ったとの満足感が漂っていた。主将の新野由里菜は「めちゃくちゃ楽しかったです」と笑った。

 「持ち味の走りとつなぎ、組織ディフェンスを体現できました。自分たちの中で、かなり成長できたシリーズでした。みんな仲良し、信頼関係もバッチリ。“自分たちはやれるんだ”という自信がつきました」

 最後の3位決定戦は死闘となった。相手は、昨年の総合優勝チーム、東京山九フェニックス。米国代表で鳴らしたエースのニア・トリバーの破壊力に3トライを許し、後半中盤で7点のビハインドを背負った。

 この試合、日体大は攻守の要、OGの堤ほのかをけがで欠いていた。でも、全員がそのアナを埋め、つなぎにつなぎ、チームとして守った。とくに途中出場の梅津悠月の猛タックルはチームを勇気づけた。総合力勝負である。窮地に立ち、チーム間の信頼が威力を発揮する。

 ラスト2分、左右につなぎ、最後は新野主将が真ん中に飛び込んだ。トライ。息を切らしながらも、同点ゴールキックを慎重に蹴り込んだ。試合は、5分ピリオドを繰り返す延長戦にもつれ込んだ。どちらかがポイントを入れたところで勝敗が決する「サドンデス方式」だ。


 ◆死闘の3位決定戦、総力戦


 もう総力戦だった。メンバー交代でリザーブがグラウンドに入っている。それでも、戦力は落ちない。心のこもった連係プレーは乱れない。日体大はディフェンスに回っても、途中出場の高橋沙羅らが面となって圧を相手にかけた。暑いから、汗でボールが滑る。ノックオンを誘った。アドバンテージ! このボールをすかさず拾って、かまわず攻めた。

 大内田夏月がタックルを受けながら左手でオフロードパスし、手をたたいて呼んだ途中交代の樋口真央がもらって走る。激しいタックルを受ける。後ろからフォローした東あかりがボールをもらって、タックルを振り切って、インゴールに飛び込んだ。決勝トライだ。フォローの位置取りが絶妙だった。

 24-19でノーサイド。ベンチから堤ら他の選手も駆け寄り、歓喜の輪ができた。いつも厳しい顔の古賀千尋監督も涙をこぼした。うれしくて、うれしくて。



 ◆古賀監督「バンザイ」


 その時の心境を聞けば、古賀監督は声を弾ませた。「バンザイッでした」。白色のサファリハットの下の顔はもう、くしゃくしゃだ。

 「観客席に向かって、ワーッと叫んだと思います。最後はリザーブも全員入れて。その子たちが活躍してくれました。ほのか(堤)がけがしていたこともあって、みんな必死で。最後、チームとしてやれました。それがうれしくて、もう泣いちゃった」

 いいチームである。外国人はひとりもいない。だから、よりコミュニケーションを大事にする。互いを信頼する。同じ絵をみる。猛練習ゆえの「あ・うん」の呼吸でパスをつなぐ。おそらく、プレーしている選手も楽しいだろう。

 準決勝は4大会連続で完全優勝を遂げた「ながとブルーエンジェルス」と対戦した。主軸の外国人選手にトライを連取されて、0-24で完敗した。ショックかと思いきや、古賀監督によると、試合後のロッカールームでは爆笑が渦巻いていたそうだ。

 「大敗したら普通、お葬式みたいに落ち込むじゃないですか。でも、このチームはならない。敗戦の映像をレビューしながら、みんな、大爆笑していました。明るい。悲壮感がないんです。落ち込んだってしょうがないじゃんって」


 ◆試合テーマは「笑って楽しむ」


 その準決勝から約2時間後。3位決定戦の試合テーマは「最後だから、笑って楽しむ」だった。みんなでエンジョイだ!

 表彰式後の通路で向來桜子と大内田は笑って、声をそろえた。

 「みんな、めちゃ仲がいい。みんな、互いを大好きなんです」

 選手の満足感は、なにより「自分の成長」があればこそ。「チームの進化」を実感できてこそだろう。昨年は年間総合5位。上位4チームには一度も勝てなかった。それが、ことしは、準優勝、準優勝、準優勝、そして3位だった。もちろん、対戦カードの運・不運はあるだろうが、ながと以外のチームには負けなかった。

 それは、チームの底上げ、選手層の厚みが増したからだ。ふだんの古賀監督の熱血指導、練習の充実があればこそ、だろう。

 しかも、みんな「ひたむき」だから、ラグビーの美徳のような何かを、日体大は表現できたのである。見る者の心の支持をつかんだのだ。これは良きカルチャーだろう。



 ◆エース松田、次はパリ五輪


 そういえば、表彰式の総合優勝・2位の合同記念撮影でリードの掛け声をかけたのは中心にいた日体大のエース、松田凛日だった。

 もう日本女子ラグビー界の「太陽」のような存在だ。シリーズの印象を聞けば、こう笑顔で即答した。

 「楽しかったです」

 ひと呼吸おき、こう言葉を足した。

 「いや、楽しかったけれど、優勝できなくて悔しさもありました。楽しいと悔しいが半々かな。でも今までで一番、楽しかったのは間違いありません」

 自分の成長は?

 「判断の部分です。自分が勝負を仕掛けるべきなのか、ボールを離すべきなのか。自分の判断が正しいことが増えたのかなと思います」

 新たな目標は、日本代表としての来年のパリ五輪出場である。秋には五輪予選を控えている。本番はこれから、である。

 「はい、そちらも、楽しんでやりたいです」

 次のターゲットは選手それぞれながら、ひたむきな日体大の女子選手たちの成長はまだまだ、つづくのである。(松瀬学=スポナビから転載)

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まっちゃん部長日記⑥2023年6月5日


 これぞ学生クラブの美徳か。女子7人制ラグビーの日体大ユニコーンズがひたむきプレーで、スタンドを沸かせ続けた。最後まであきらめず、結束してチャレンジする。誰もがチームのためにからだを張った。決勝戦。劇的な幕切れに少なくない数の人々の感涙をも誘った。こちらも、ちょっぴり泣けてきた。


 大健闘の準優勝。それでも、教育実習の合間、大会初日朝に栃木から駆け付けた日本代表のエース、4年生の松田凛日(國學院栃木高出身)は小声を絞り出した。

 「悔し過ぎるなあ」

 古賀千尋監督はこうだ。トレードマークの濃紺の帽子の下の顔を少しゆがめて。

 「悔しい。本気で勝ちにいったんで、悔しいです」


 素朴な疑問。なぜ日体大のひたむきなプレーは見る人の魂を揺さぶるのか。監督は少し考え、こう続けた。

 「私は、“組織は個に勝る”とずっと言ってきています。(日体大が)どこよりもチームだからじゃないですか」


 ◆ロスタイム、執念のトライ


 4日の東京・秩父宮ラグビー場。前日と違って、朝から青空が広がった。日中の最高気温が27度。初夏を思わせる日差しの中、日体大が快進撃をつづけた。数少ない伝統的な横縞ジャージ、スカイブルーと紺色のそれが陽射しにキラキラ輝く。社会人の強豪クラブとは違い、外国人選手はひとりもいない。ただ結束があった。相手に挑みかかる気概があった。


 国内最高峰の『太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ』第2戦、東京大会。メインスタンドは約3千人の観客で埋まった。日体大は第1戦に続き、またも決勝に進出し、第1戦と同じく「ながとブルーエンジェルス」と対峙した。


 試合終了のホーンが鳴る。次がラストプレーで、ながとボールのスクラムとなった。日体大の7点(ワントライ、ワンゴール)のビハインド。万事休ス。おおきなため息がスタンドから漏れた。


 でも、日体大はあきらめない。このスクラムをぐいと押し込んだ。凄まじいプレッシャーで、大会MVPとなった南アフリカ代表のナディーン・ルイスのハンドリングミスを誘い、ターンオーバー(攻守逆転)とした。


 日体大が攻める。7人一体となって、攻めに攻めた。つなぐ。スペースを突く。タックルを受けると、素早く、激しい寄りでボールを生かす。回す。左から右へ、右から左へ、アングルチェンジを絡めて攻め続けた。もう執念だ。


 相手の反則を誘発する。一度、二度。その都度、すぐにアタックする。スタンドのファンは日体大に声援と拍手を送る。「ニッタイ! ニッタイ!」。ラックの右サイドを向來桜子が小刻みなステップで駆け抜け、ゴール直前までボールを運んだ。二つ目のラックの左サイドを主将の新野由里菜が突き、右中間に飛び込んだ。


 トライだ。新野も向來も両手を突き上げた。ともに顔はくしゃくしゃだ。電光掲示板の数字は試合時間の後半7分を大幅に超え、「9:10」だった。ゴールが決まれば、同点となる。延長にもつれ込む。


 ◆無情のゴール失敗、駆け寄るチームメイト


 しかし、簡単そうに映るが、実は中央右寄りのドロップゴールは右足キッカーには意外に蹴りづらい。案の定、新野が蹴り込んだドロップゴールは無情にも左ポストに当たって外れた。22-24のノーサイド。あと一息だった。


 新野主将は両手で顔を覆い、そのまま膝まづいて泣き崩れた。給水係が、そして東あかりがすぐに駆け寄り、他の選手も励ましに次々に集まった。いいチームだな。新野主将の述懐。

 「ああ、“やっちゃった”って思いました」

 表彰式後、もう涙は乾いている。主将の言葉には悔しさと満足感が混じる。

 「まあ、前回(熊谷大会)よりは自分たちの準備したことは出せました。ドロップゴールはもう、練習するしかありません。次に切り替えます」


 学生のプライドとは。

 「チャレンジすることですか。いつも、チャレンジャーということを肝に銘じています」

 再び、松田。

 「点差以上に力の差を感じました。例えば、ブレイクダウンのところだったり、接点のところだったり。まだまだ、差はあるなあって。いいファイトではなく、自分たちはやっぱり優勝したいので。次はしっかり準備して試合に臨みたいと思います」



 ◆スーパー大学生たちの誇り


 このシリーズの第1戦の熊谷大会の決勝戦(5月21日)では、日体大はながとブルーエンジェルスに0-31で完敗していた。確かに松田が欠場していことはある。だが、とくにキックオフのレシーブ(7人制ラグビーではトライを取ったチームのキックで再開される)でやられた。反撃の糸口をつかめなかった。


 だから、この2週間、キックオフのレシーブを徹底して練習してきた。男子選手にも手伝ってもらった。その効果だろう。布陣が安定し、向來らがナイスキャッチを重ね、何度も逆襲に転じたのだった。


 日体大のキックオフから先制トライを奪われたが、前回決勝のように連続トライは許さなかった。松田の60メートル独走トライ、敵陣ゴール前の相手スペースを突いた大内田夏月の連続トライで12-7と一時は逆転した。


 松田は言った。

 「前回はキックオフの部分で“ながとさん”にやられていました。でも、今日は修正して、試合に臨めたのかな、と思います」


 攻守に活躍した堤ほの花(ディックソリューションエンジニアリング)もまた、チームの成長を実感する。25歳のOG。日本代表として、いぶし銀の光を放つ。言葉に充実感がにじむ。

 「熊谷では悔しい気持ちが強かったんですけど、今日はやり切ったなと思いました」

 学生チームのプライドを聞けば、「私は社会人のOG枠ですから」と笑った。

 「でも、気持ちは大学生。みんなと回復力がちょっと違いますけど。みんな、しっかり自分のやるべきことをやり切って、ちゃんと試合で出してくれます。スーパー大学生たちだなと思います。ほんと、誇らしいです」



 ◆学生のプライド


 日本ラグビー協会の宮﨑善幸・女子セブンズ日本代表ナショナルチームディレクターは、「日体大の強さは“学生のプライド”」と表現した。

 「相手に外国人がいようがいまいが、自分たちのラグビーで勝つといった強い気持ちを感じます。外国人がいなくても言い訳なしで勝負しているんです。どのチームも、日体大と戦うのが一番嫌なんじゃないでしょうか」


 なるほど、激闘となった準決勝の東京山九フェニックスも、決勝のながとブルーエンジェルスも、組織ディフェンスで強力外国人を封じ込んでいった。ひとりでダメなら、二人のダブルタックル、三人のトリプルタックルで。

 倒れたら、すぐに立ち上がる。スペースをつぶす。そのためには相手を上回る運動量が求められる。タフな気持ちも。そこには厳しい毎日の鍛錬の跡がみえるのだった。



 ◆次こそ、ユニコーンズ、ナンバーワン!


 試合後の表彰式。

 準優勝のカップをもらい、日体大選手は記念撮影では人差し指を突き上げて声をあげた。

 「次こそ、ユニコーンズ、ナンバーワン!」

 学生ならではの覇気が風にのる。笑顔がはじける。古賀監督はこう、しみじみと漏らした。

 「学生にほんと、“ありがとう”ですよ」


 グラウンドからの帰り際、4年生の松田と2年生の向来、髙橋夏未の三人が並んでスタンド下のコンコースを歩く。

 学生のプライド? いや日体大のプライド?を聞けば、なんだろう、と笑い合った。

 松田は言った。

 「負けん気」

 向來は笑いながら右手を頭にのせた。

 「ここに角が生えていることかな」

 日体大の愛称ユニコーンズのユニコーンは伝説上の動物「一角獣」である。額に魔力を持つ一本の角が生えているとされている。

 向來は言った。

 「私は、2年生だからまだ2本」

 髙橋も言葉を足した。

 「私も、2年生だから2本。4年生は4本」

 三人が口をそろえた。

 「次こそ、ユニコーンズ、ナンバーワン!」

 このポジティブさと明るさがいい。笑い声がコンコースに響きわたった。

(松瀬学=スポナビから転載)



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