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『謹賀新年。日体大女子が「我慢の引き分け」で全国大会準決勝へ進出』

まっちゃん部長日記⑬【日体大対横河武蔵野】


 謹賀新年。2024年が明けました。能登半島地震の被害の甚大さに胸を痛めながら、全国のラガーたちはラグビーができるありがたさを感じていることでしょう。日本体育大学ラグビー部女子は15人制ラグビーのOTOWAカップ関東女子大会最終戦で横河武蔵野Artemi-Starsと戦い、21-21で引き分けました。

 引き分けは勝ち点2ですから、日体大は勝ち点21で関東大会を終えました。この日、日体大戦の次の試合で、東京山九フェニックスがRKUグレースに3トライ差以上の17-0で勝ったのでボーナス点を加えて勝ち点23と伸ばし、1位となりました。結果、日体大は2位となり、全国大会準決勝(1月21日・鈴鹿)の出場権を辛うじて獲得しました。ホッとしました。

 


 ◆小牧共同主将「ラグビーができるのは当たり前じゃない」

 

 1月6日、東京・八王子の上柚木陸上競技場。柚木は「ゆぎ」と読みます。都心のベッドタウンです、競技場の周りには高層マンションが林立しています。雲一つない青空が広がります。遠くには真っ白な富士山の頂が見えます。



 そんな長閑(のどか)な風景とは対照的に、グラウンドでは激しい攻防が繰り広げられました。共同主将のプロップ小牧日菜多は被災地に思いをはせ、「ラグビーができるのは当たり前じゃない」としみじみと漏らしました。

 「ボーナス点が取れず、悔しいですね。自分たちでミスやペナルティーをしてしまって、自分たちのラグビーができませんでした。でも、マジでみんな我慢してくれました」

 確かにボーナス点を取って勝っていれば、1位になれたのですが。しかし、自慢の粘りのディフェンスは見せてくれました。タックル、タックル、またタックル。見ていて、胸が熱くなりました。そこに日体大のふだんの努力と意地が見えました。

 もしも負けていたら、全国大会準決勝へ進出はできませんでした。つまり、勝ちに等しい引き分けなのです。そう言葉をかければ、小牧共同主将は「ま。そうですね」と安どの表情を浮かべました。

 

 ◆前半終盤5分間の鉄壁ディフェンス

 

 指令塔のCTB新野由里菜共同主将を体調不良で欠いたこともあったのでしょう、ゲームメイクで日体大らしいテンポのいい攻撃が鳴りを潜めました。ペナルティーが相手の6個に対し、日体大は15個(前半7、後半8)もおかしました。とくにブレイクダウン周辺で、主に前半はノット・ロール・アウェイ(タックルをした選手が倒れたままその場から離れずに相手のプレー、球出しを邪魔すること)、後半はノット・リリース・ザ・ボール(ボールを持った選手が倒れてしまったにもかかわらず、ボールを放さずに持ち続けること)の反則が目立ちました。判断ミス、ハンドリングミスもあり、半ば、自滅しかけました。

 それでも、日体大は粘りました。スクラムは劣勢に回りましたが、相手得意のラインアウトでは優位に立ちました。マイボールはほぼ完ぺきでした。前半24分、ラインアウトのモールを押し込み、右に展開。ラックの右サイドを突いて、プロップ小牧共同主将がポスト右に飛び込みました。SO大内田夏月のゴールもなって、7-7の同点としたのです。

 前半30分過ぎ、FWの大黒柱、ロックの村瀬加純が足を負傷し、担架で運び出されました。日体大はコリジョン(接点)、FW戦で後手に回り出します。でも、気力は衰えません。プロップ小牧、フッカーの根塚智華、プロップの牛嶋菜々子のフロントロー陣が頑張ります。前半のラスト5分です。日体大はゴール前ピンチを続けながらも、しぶといタックルでゴールラインを割らせませんでした。勝負所でした。よくぞ、持ち応えました。

 

 ◆ピンチのラインアウトでファインスティール。向來「リフターのお陰です」

 

 後半13分、ラックから左展開、CTB畑田桜子がハンドオフ&ステップでディフェンスラインをブレイクし、約50メートルを走り切りました。トライです。同点とされた後の後半29分、WTB東あかりが自陣に蹴り込まれたボールをうまくキックで転がし、はねたボールを拾って、約60メートル走り、フォローしたナンバー8の向來桜子が中央に飛び込みトライしました。

 7点のリードも、後半31分、またも左隅にトライを許し、21-21とされたのです。「ニッタイ、ガマン!」「ニッタイ! ノーペナ(ペナルティー)」との掛け声が飛びます。

 ここからは、まさに死闘でした。横河武蔵野はFW勝負に徹してきます。どんどんと力づくで前に出てきます。日体大は耐えに耐えます。一丸です。ロスタイムが2分でした。「あと10秒」との声がかかります。相手ボールのラインアウトです。大ピンチです。

 ここで、ナンバー8の向來が相手ボールをどんぴしゃで奪ってスティールしました。SH高橋沙羅がタッチ外に蹴り出し、ノーサイドです。

 試合後、「ナイス!ラインアウト」と声をかければ、いつも陽気な向來は、「自分は跳んだだけです」と謙遜しました。

 「あれは、リフターがうまく、(自分を)持ち上げてくれたからです。ヒナタさん(小牧)のお陰です」

 ディフェンスのラインアウトは駆け引き勝負です。相手の投入場所を読み切るかどうか。「(相手が)メンバーを代えてきたので、選択が消えました。そこ(自分のところ)に絞っただけです」と笑いました。



 ◆夢をつなぐことができた

 

 課題は多々、残りました。でも、勝って反省できるのはラッキーです。古賀監督も疲労困憊のご様子でした。「厳しい試合でした」と安どのため息を漏らします。

 「ボーナスポイントを取れなくもなかったんですけど…。意地で何とか同点に持ち込めました。次につながったことがすべてです」

 再び、小牧共同主将はこうです。

 「夢をつなぐことができました」

 夢とはもちろん、全国制覇です。そう、そう、夢みてなんぼ、なのです。(松瀬学)



OTAWAカップ 関東女子ラグビー大会最終成績


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