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まっちゃん部長日記

まっちゃん部長日記

 

 これぞ大学スポーツの理想だろう。男子部員の応援を受けて、日本体育大学ラグビー部女子がいきいきと躍動した。日体らしい「継続ラグビー」で7トライを奪い、立正大アルカスに48-10で完勝した。

 やっぱり晴れた11月23日の勤労感謝の日だった。日体大の横浜・健志台キャンパスのラグビーグラウンド。『OTOWAカップ 関東女子ラグビー大会』の第3戦。午後2時にキックオフされた。気温がぶるぶる寒い9度。冷たい強風が吹き、スタンドの男子部員は肩をすぼめていた。でも、熱のこもった声援がとぶ。

 「ニッタイ、ニッタイ、ニッタイダイ!」


 

 ◆群青に染める。古賀監督「とっても、うれしいですね」

 

 今年度のチームスローガンが『翔』、そして活動目的は『群青に染める』である。成績はもちろんながら、今年度はさらに周りから応援されるチームになり、観客席を日体カラーの群青色に染めることをめざしているのだった。



 スタンドの男子部員や保護者、ファンは、群青色の小旗をばたばた振ってくれていた。そのスタンド風景を眺めた古賀千尋監督が幸せそうにぼそっと漏らした。

 「群青色の旗が目について、とっても、うれしいですね」

 スタンドに父親と座っていたちっちゃな女の子がこう、叫んだ。

 「青~、がんばれ~」

 

 ◆低くてまとまったスクラムで圧倒。峰愛美「自信ができました」

 

 中5日。前節の試合は、YOKOHAMA TKMに敗北した。序盤に先制トライを奪われ、チームの主導権を与えてしまった。セットピース(スクラム、ラインアウト)、ブレイクダウンでやられ、ハンドリングミスも続発した。

 でも、この日はちがった。前半5分の相手ボールのファーストスクラム、中盤での2本目のスクラム、日体大は8人が低く結束して一気に押した。大相撲でいえば、電車道。相手のコラプシング(故意に崩す行為)の反則を誘った。

 左プロップの“元気印”、峰愛美が述懐する。

 「序盤のスクラムでイケたので、自分たち、自信ができました」

 峰によると、前回の敗戦後、スクラムのスポットコーチ、山村亮さんから修正ポイントが入ったそうだ。もっとセットアップでまとまる。フロントロー、バックファイブ(両ロック、ナンバー8)のひざを低くして、FW8人で結束して組め、と。

 風下の前半はほとんどが敵陣だった。ラインアウトは序盤、うまくいかなかったけれど、試合の進行とともによくなっていった。攻めにニッタイらしいリズムが生まれる。FWが前に出て、生きたボールを出す。蹴っては、ボールを奪回し、継続して攻める。



 主将のフランカー、樋口真央が八重歯をのぞかせ、笑顔で振り返る。

 「前の試合は“入り”が課題だったので…。前半、ちょっと苦しんだんですけど、先に自分たちのペースに持ち込めたんで、よかったです」

 

 ◆継続ラグビー。大内田「自分たちがやりたいことができました」

 

 前半30分過ぎ、ラインアウトから展開し、ナンバー8の向來桜子がラックサイドを突破。タイミングよい球出しをSH山本彩花がさばいて左オープンへ。SO大内田夏月がロングパスをWTB梅津悠月につなぎ、左隅に飛び込んだ。

 天真爛漫の大内田が顔をほころばす。長い黒髪が揺れる。スタンドには、福岡から応援に駆け付けた母親の姿もあった。

 「先週の試合は自分自身がテンパちゃって、ははは。今日は落ち着いて冷静にプレーすることができました。いいキックも何本か蹴られました。チームとしても、自分たちがやりたいことができてよかったです」



 今日の試合のキーワードは『継続』か。

 「前に出て、ボールを動かし続けようというのがあって。それは結構、できたんじゃないかと思います。FWがごりごり、フィジカル的に勝ってくれて。FWが前に出たところで、バックスがボールをもらえたので、テンポがよくなりました」

 個々のタックル、ディフェンスもよく、前半は8-0で折り返した。



 SH山本彩花もFWに感謝する。澄んだどんぐりマナコがキラキラだ。

 「みんな勢いがあってよかったです。フォワードが前に出てくれたので、こっちもボールをさばきやすかったです」

 


 ◆後半にトライラッシュ。足がつった水野「最後はもう限界でした」

 

 風上の後半、日体大らしい攻めが炸裂した。

 序盤、立正大アルカスにトライを返されたが、すぐに連続攻撃を仕掛けていく。後半8分、ラインアウトから左右に展開し、WTB梅津が左ライン際を快走し、フォローしたCTB水野がトライした。これで勢いづいた。ナンバー8の向來、ロックの村瀬加純、キレキレのSO大内田、途中交代でプロップに入った八尋瑛、途中交代のウィング江尻栞那が、次々とトライを重ねた。後半は大量6トライと畳みかけた。ボーナスポイント(4トライ以上)もゲットした。



 この日もチーム事情は苦しく、通常8人のリザーブには5人しか登録できなかった。その分、一人ひとりが走り続けるしかない。寒さもあっただろう。終盤、足がつりそうな選手が相次いだ。最後は、水野が、ピキッとつった右足でボールをタッチラインの外に蹴り出して、ノーサイドとなった。水野が痛みをこらえながら笑う。

 「最後は、もう限界でした。それだけ、走り回ったんです。蹴る動作に入った瞬間、“あっ”となっちゃった」

 水野もまた、この試合に汚名返上をかけていた。

 「TKM戦に負けちゃったから、この試合にすごくアツくかけていたんです。アップ前から、みんな、気合が入っていました」

 


 ◆古賀監督「ようやく、ニッタイらしい試合ができました」

 

 スタンド上段の管制室。

 試合が終わると、古賀監督は安どのため息をついた。

 「ようやく、ニッタイらしい試合ができました。前回は、フラストレーションがたまる試合だったので。今日は、試合を通じて、自分たちのやりたいラグビーができました」

 選手たちの成長は?

 「蹴って、追って、奪い返して、アタックを継続できたことでしょうか。ラインアウトからもそうですけど、継続に成長を感じました」


 

 ◆エクボの西村澪「びっくりです。うれしいです」

 

 最も活躍した選手に贈られる、試合の『スターオブザマッチ』には、攻守にからだを張ったロックの西村澪が選ばれた。受賞のご気分は? と聞けば、エクボをつくって、顔をくしゃくしゃにした。

 「びっくりです。うれしいです」



 それにしても、タックルもがんばっていた。

 「はい。タックルする場面がたくさんありました。そのところで、しっかり相手を止めることができてよかったです。相手を敵陣に封じ込めることができて。ボールを奪い返すこともできました」

 FWはスクラムで押し勝ち、ラインアウトでも前回よりかは大幅に改善された。みんながんばった。とくに両ロックの働きが大きかった。

 チーム内表彰の『ゴールドシール』は、フッカー根塚智華とFB松田奈菜実がそれぞれゲットした。おめでとさ~ん。


 

 ◆樋口主将「これからも勝ち切っていかないといけません」

 

 まだ戦いはつづく。

 樋口主将は短く言った。

 「これからも、勝ち切っていかないといけません」


 

 それにしても、男子部員の応援はうれしい。ありがたい。

 大内田に聞いてみた。励みになりますか?

 「めっちゃ、なります、はい、なります」

 

 余談ながら、試合終了30分後、スタンドの陰で、数人の男子部員が、戦い終えた女子部員たちに差し入れをこっそり渡していた。ほのぼのとした空気が漂う。いいなあ。青春というか、若々しいというか、なんというのか、僕は純情を感じたのだった。



(筆:松瀬学/写真撮影:善場教喜さん)



 
 

まっちゃん部長日記@AGFフィールド

 

 まるで「日体フェスタ」である。秋晴れの日曜の11月17日。日本体育大学ラグビー部の女子も男子も、同じラグビー場で相次ぎ公式戦に挑んだ。ともにからだを張った。ともに相手に挑みかかる気概は見せた。でも…。ともに敗北した。少なくない男女部員が悔しくて泣いた。こちらの胸も痛くなる。ああ青春の涙は貴いのである。

 

【女子:●日体大 12-36 YOKOHAMA TKM】

 

 ◆古賀監督「セットピースとコリジョンで圧倒されて」

 

 太陽の陽射しが、府中・AGFフィールドの周りの赤や黄に色づいた木々の葉を照らす。並んで風に揺れるとキラキラ輝く。まず女子の試合が午前11時、キックオフされた。「OTOWAカップ 関東女子ラグビー大会」。相手は、ニュージーランド代表ら強力外国人選手を擁するYOKOHAMA TKMだった。

 「ニッタイダイ! ニッタイダイ! ニッタイダイ!」。さほど多くないスタンドの観客から大声が飛ぶ。その声を背に小柄な日体大選手たちはチーム一丸となって大きなからだのTKMにかかっていった。低くて、ひたむきなタックル。倒れてはすぐに立ち上がる。アタックでは時にテンポよくつないでいった。

 でも、チャンスになると、ハンドリングエラーが起きた。ブレイクダウンではパワフルな相手に圧力を受ける。時にはターンオーバー(ボール奪取)される。何といっても、ラグビーの基本であるセットピース(スクラムとラインアウト)で圧倒された。

 「(敗因は)セットピースですね」。試合後、古賀監督は小さく漏らした。

 「前半のラインアウトは(マイボールで確保できたのは)8分の3ですからね。これでは、厳しいです。セットピースとコリジョン(接点)で完全に圧倒されました」


 

 ◆ハンドリングミスでチャンスがつぶれて

 

 スクラムではコラプシング(故意に崩す行為)でPKをとられる。TKMのナンバー8、ラディニヤブニのパワフルなサイドアタック、NZ代表のCTB、ブルッカーの強くてうまいプレーにゲインを許す。日体大の闘将、フランカーの樋口真央やナンバー8向來桜子、CTB水野小暖らが賢明なタックルをするも、前半に3トライを奪われてしまった。ハーフタイム、0-22で折り返した。

 日体大としては、走力で相手を上回るしかない。後半9分、古賀監督は得点を取りに行こうと、アタック力のあるバックスの谷山三菜子、高橋夏未を交代で出場させた。攻めのテンポが上がる。その5分後、絶好のトライチャンスが生まれた。

 ラグビーセンスに長けたSO大内田夏月がボールを小さく蹴って、自らキャッチ、敵陣深く攻め込んだ。右に左に振る。もういっちょう大きく右オープンへ。ラインの人数は余っていたのに、ハンドリングミスでノックオン。ああ惜しい! チャンスはついえた。


 ◆ロック村瀬加純が、FB松田奈菜実が意地のトライ

 

 後半30分、ラインアウトのドライビングモールからTKMにトライを重ねられ、0-29と点差を広げられた。でも、日体大の闘志は衰えない。「ここから、ここから」。日体大選手の大声が出る。直後のキックオフ。相手がボール処理を誤ったところを逃さず、ボールを奪回し、密集サイドをFWが立て続けに攻めた。最後はロックの村瀬加純がディフェンスの壁をこじ開けて、ようやくトライをもぎ取った。こういう時の村瀬のからだのねじ込みは本当にうまい!



 試合後、村瀬に「ナイス! トライ」と声を掛ければ、「ありがとうございます」と頭をちょこんと下げた。そして、自分がリードするラインアウトを反省する。

 「でも、今日のトライをあまりとられなかった原因がラインアウトだから。そこの精度を上げて修正して、残りの試合はボーナスポイントをとって勝ちたいと思います」



 ロスタイム。点差は開けど、日体大の最後の意地である。相手の足は止まっている。一気に攻め込み、いいタイミングで右オープンに回す。高橋夏未からFB松田奈菜実にキレイなパスが渡り、右中間に飛び込んだ。12-36でノーサイド。

 松田は言った。

 「仲間が最後まで粘ってつないでくれたボールだったので、絶対にトライしたかった。よかったです」

 そういえば、終盤、途中交代でフロントローに入った1年生の樫山純佳、八尋瑛は踏ん張った。スクラムで相手からコラプシングを奪い返した。


 

 ◆悔し涙の樋口主将「悔しかったんで…。つぎ、がんばります」

 

 敗れたチームで一番活躍した「モストインプレッシブプレーヤー(MIP)」には、プロップ峰愛美が選ばれた。スクラムでは押されながらも、フィールドプレーで献身的な動きを見せたからだろう。いつも一生懸命。

 峰は「これで終わりじゃない」と言葉に力を込めた。

「全体的に敵陣にいけない時間帯が結構あって…。敵陣にいっても、スクラム、ラインアウトがちょっと後手に回ってしまって…。次の試合までには改善していきたい」

 樋口主将はペトボトルを左手に持って、右手で目元の涙をぬぐっていた。話を聞こうとすれば、また涙があふれてくる。すみません。声を絞り出した。

 「悔しかったんで…。つぎ、がんばります」



 ◆古賀監督「ひとつひとつ、プレーの質を上げて、成長していくしかない」

 

 ストレスフルな試合だったのだろう、通路の古賀監督の表情は疲れ切っていた。

 でも、目には力がある。前を向く。決して、くじけない。中5日で立正大(11月23日・日体大G)との試合がある。

 古賀監督は言葉に力を込めて、こう言った。

 「チームの成長を見る上で、何もできなかったという印象はありません。最後まで試合を捨てずに、学生たちがやっていたのは間違いないのかなと思います」

 課題は。

 「プレーひとつひとつの質ですね。精度です。セットピース、コリジョン、ハンドリングと。ひとつひとつ、プレーの質を上げて、成長していくしかないですね」

 ここで、ひと呼吸。

 「次は、もっと、もっと、成長した姿をお見せできるようにしたいと思います」

 午後1時、通路の外のグラウンドの方から大声が聞こえてきた。

 「ニッタイダイ! ニッタイダイ! ニッタイダイ!」

 何かと思えば、次の日体大の男子の試合の応援の掛け声だった。



 【男子 ●日体大 19-36 青学大】

 

 さあ、男子だ。関東大学対抗戦Aグループ(1部)。日体大の試合は女子に引き続き、午後2時、キックオフされた。相手が筑波大を倒した青学大。

 バックスタンドの一角には試合を終えた女子部員が全員、陣取った。高音の声援が秋風にのる。「ニッタイダイ、ニッタイダイ、ニッタイダイ」。学生らしい、いい光景だった。

 メインスタンドには保護者、OBが大挙して駆け付けている。昨年度の伊藤拓哉キャプテン(自衛隊)の姿もあった。加えて、女子部員にも応援されるって、何ともありがたいことじゃないの。


 

 ◆猛タックルの大竹智也「選手権にチャレンジしないと男じゃない」

 

 これで張り切らなければ、男じゃない。この日の日体大はとくにタックルが素晴らしかった。どんどん、低く、踏み込んでいく。タックル、タックル、またタックル。時には執念のダブルタックルも次々と決まった。黄色ライン付きの青学大の黒色ジャージをつぶしていく。

 猛タックルを連発した4年生のフランカー大竹智也は試合後、こう言ったものだ。

 「まだ(全国大学)選手権に対して首の皮一枚、つながっていたんで、そこにチャレンジしないと、ラガーマンじゃない、男じゃないと思っていました。からだを張ろうと心に決めていたんです」

 

 ◆痛恨の前半終了間際の失トライ。SH伏見「悔しさの味がこれまでとは全然違う」

 

 あえて勝負のアヤを探せば、前半終了間際の失トライだったであろう。

 前半終盤に青学大に先制トライを許した3分後、前半38分だった。日体大は猛反撃に転じ、敵陣に攻め込んだ。右側のラインアウトでナンバー8の岡部義大がうまくボールをキャッチし、左オープンに回す。WTBの勝目龍馬が鋭くタテに切れ込んで大幅ゲインした。タックルを受け、ゴールラインまで2、3メートルでラック。右サイドを突く。あと1メートル。またラック。さらに右サイドを突くかと思いきや、SH伏見永城は右にラインをひいたWTB勝目にパスし、さらに右ライン際のWTB古賀剛志にロングパスを投じた。

 これが乱れてワンバウンドし、こともあろうか、ボールは相手ナンバー8の内藤基の胸に収まった。前のめりの日体大は逆を突かれる格好となり、内藤にライン際を100メートル近く走られてしまった。最後、FB大野莉駒が懸命に戻ったが、タックルは届かなかった。スポーツの世界、「たら・れば」は禁句ながらも、もしも日体大がここでトライを返していれば、同点だった。が、スコアを0―10とされてしまった。

 伏見の述懐。

 「自分たちのミスでトライをとられてしまった。自分たちのクビを自分たちで締めてしまった感じです。インターセプトされてしまって…」

 でも、ここ2週間、練習でやってきたことは出せたと言葉を足した。

 「悔しさの味がこれまでとは全然違います」


 

 ◆湯浅直孝HC「やろうとしたことはやっていた」

 

 おそらく、試合の出来は今季一番だっただろう。

 1週間前には練習試合で大学王者の帝京大の胸を借りた。立教大に敗れた後、練習の質量も変わった。湯浅直孝ヘッドコーチは振り返った。

 「自分たちの足りない部分を補おうと、課題をひとつひとつつぶしてきたんです。エリアの取り方とか、ディフェンスのダブルタックルとか、ブレイクダウンのプレッシャーの掛け方とか。やろうとしたことは試合で出せていたと思います」



 後半10分過ぎ。途中交代出場のCTB嘉藤匠悟がナイスタックル。トンガからの留学生ロック、愛称「トム」ことパエア・レワががつんと相手を吹き飛ばす。相手のパントキックをWTB勝目が捕って、ディフェンス網のギャップをついて大幅ゲイン、パスをもらったFB大野がフランカー家登正旺につなぎ、家登がまっすぐ駆け抜ける。ラックで右オープンに。ワンバウンドしたボールをロックの岸佑融が捕って突進する。ゴールライン直前でラック。嘉藤がブラインドの右サイドを突いて、右隅に飛び込んだ。



 SO五味侑也が難しい位置からのゴールキックを左足で蹴り込んで、7-10と追い上げた。「ありがとう」の声がスタンドから飛ぶ。これは、イケる。本気でそう思った。その後、ワントライを加えられたが、後半22分には、相手ラインアウトをターンオーバーして、ラックからSH伏見がパントキックを上げた。青学大が処理ミス。左右に揺さぶり、SH伏見が右ライン際を上がってきたプロップ築城峻汰に飛ばしパスを投げ、築城がプロップらしからぬスピードで駆け、左ライン際に飛び込んだ。12-17と追いすがった。


 

 ◆痛かったラインアウトのミス。萩原一平主将「しっかり投げ込んで修正する」

 

 さあ、勝負のラスト20分である。

 日体大が勢い付く。でも、敵陣のマイボールラインアウトではフッカー萩原一平主将のノットスローインのミスでチャンスを逃す。逆に相手ボールのラインアウトからはトライを簡単に奪われてしまう。それでも日体大はあきらめない。



 ラスト3分の後半37分、マイボールのラインアウトをロック岸佑融がうまく処理し、またも左右のオープン攻撃を繰り出す。走る。つなぐ。走る。いいテンポで生きたボールが出る。負傷から復帰したFB大野莉駒が切れ味鋭いダッシュでゲインし、右ライン際のWTB古賀にパス、古賀が右から中央に回り込んでトライした。

 これで19-22。またも3点差に詰め寄った。スタンドの声援はもう叫び声に近かった。

 「ニッタイダイ、ニッタイダイ、ニッタイダイ!」

 でも、最後の最後にPKを与え、ラインアウトからのトライを献上した。立て続けに2本。最後は青学大のパワーに屈した格好だった。

 19-36でノーサイド。これで日体大は6戦全敗、1部の7位以下が確定し、対抗戦1部、2部の入れ替え戦に回ることが決まった。残念無念。

 萩原一平主将は「自分のスローが」と嘆いた。

 「大事なところで(ラインアウトのミスを)してしまっているんで。フッカーとしての役割を任されているところなので。練習でしっかり投げ込んで修正するしかありません」


 

 ◆秋廣秀一監督「勝てる試合を落としました」

 

 秋廣秀一監督はぽつりと漏らした。

 「勝てる試合を落としました」

 勝機はあっても、敵陣に入って、マイボールのミスがこれほどあっては、勝つことはできまい。同監督はこう続けた。

 「敵陣に入ってのラインアウトを何本かとれていれば…。ノット(ストレート)はちょっと…。でも、やってきたことが形にようやくなってきました。あとは精度ですね。敵陣にはいっての回すところ、ハンドリングエラーがなくなれば。もう一回、やってきたことを徹底して、(対抗戦グループ)最後の慶応にぶつかりたい」

 湯浅HCはこうだ。

 「やればできるということを改めて再認識できたと思います」

 次の慶大戦は?

 「勝たないと何も始まらない。勝ちます」

 

 ◆燃える闘魂、大竹智也「ようやく戦うチームになれた」

 

 この日のMIPにはトムが選ばれた。ピッチでのインタビュー。スタンドの観客に向かって、マイクに言った。緊張で声が上ずっている。

 「きょうの応援、ありがとうございました」



 大活躍のFWリーダー、ロックの岸は泣いていた。

 「やっぱり、ミスが…。自分たちのミスがとくに前半は多かったです」

 攻守に暴れたフランカー岡部もまた、泣いていた。

 「チームの出来も雰囲気も、間違いなく、一番、よかったです。だけど、また勝ち切れない。ニッタイの走り勝つラグビーが後半、できたんですけど、モールもセットプレーもまだ、相手の方が一枚上手でした。少し修正して、残る試合を勝ち切るようにしたい」

 

 有言実行。再び、燃える闘魂の大竹は言った。

 「みんな、きょうはからだを張っていました。これでやっと戦術的な反省もできます。そのチームとしての成長が、ようやく戦うチームになれたと思います」

 やっとで戦闘集団と化した日体大は12月1日、対抗戦最終戦として、日本のラグビー・ルーツ校、慶大に挑戦する。意地にかけて、無勝利では終われない、絶対に。


筆:松瀬学

写真撮影:女子は善場教喜さん

男子は大野清美さん


 

 
 

まっちゃん部長日記@関東大会開幕戦


 雲ひとつない青空が広がる秋晴れである。まさにラグビー日和の11月3日の「文化の日」。15人制ラグビーのOTOWAカップ第35回関東女子ラグビー大会が開幕した。日本体育大学は合同チーム「Pieces」を36-10で破り、好スタートを切った。

 日体らしいハードワークとひたむきさ、一直線の頑張りに魂が揺さぶられる。ああ青春ど真ん中だ。さあ、新たな物語が始まる。


 ◆試合登録は3人足らずの20人。樋口主将「みんな、へとへとです」

 

 試合前、この日のメンバー表をみて驚いた。通常各チームの登録人数は23人、だが日体大は20人しか名前がないのだった。相手チームは当然、23人。古賀千尋監督に確認すれば、「けが人が多くて」と説明してくれた。試合後、チーム随一の頑張り屋さん、フランカー樋口真央主将は「みんな、へとへとです」と苦笑いしたものだ。

 「交代選手が少ないのは分かっていました。でも、走って、走って、走りました。とくにプロップ陣がよく、がんばってくれたと思います」

 ところで、相手チームの「Pieces」ってどんなチームなのか。「ピーシーズ」と読む。関東協会スタッフに聞けば、BRAVE LOUVE、自衛隊体育学校PTS、北海道バーバリアンズディアナ、弘前サクラオーバルズ、国際武道大学から成る合同チームだった。なるほど、「piece(部分、一片)の集合体を意味するのか。むしろ、「peace(平和)」の意味合いも感じるのだった。実は女子15人制ラグビーの競技人口の厳しさが見てとれる。

 また合同チームとはいえ、各チームのトップ選手の選抜チームみたいな編成だった。日本代表や、有力外国人選手も名を連ねている。手ごわそうな相手だった。

 

 ◆15人制ラグビーデビュー戦のFB松田奈菜実「楽しかったです」

 

 会場が、横浜市の日本体育大学健志台キャンパスのラグビー場だった。

 淡い黄色に染め始めた樹木に囲まれグラウンドでは、緑色のきれいな人工芝が陽射しに光っている。午後1時、相手ボールでキックオフ。風上の前半。ボールを持てば、紺色と水色の段柄ジャージの日体大が勢いよく走り出す。

 鋭く前に出るディフェンスが、攻めのリズムをつくる。とくにFWの集散がいい。ブレイクダウンから出た生きたボールを、SH山本彩花が左右にさばく。SO大内田夏月がディフェンスラインのギャップをつけば、観客席から感嘆の声が漏れた。

 前半5分。SO大内田が判断よく、絶妙のキックを左のインゴールに蹴り込んだ。「あ・うん」の呼吸で反応したFB松田奈菜実が好ダッシュを見せ、デッドライン目前でボールを押さえて先制トライした。笑顔で右手を突き上げた。

 日体大ラグビー場のインゴールは比較的広い。「地元の利」を生かした格好である。それにしても、松田はこの日、メチャ躍動していた。プレーに喜びが満ち溢れていた。

 試合後、松田になぜ?と聞けば、「デビュー戦ですから」と笑った。

 これまで2年間、ケガに泣かされ、15人制ラグビーでは公式戦に出ることはできなかった。だからだろう、「楽しかったです」という言葉に実感がこもる。

 「最初から、自信持って、思い切りプレーしようと決めていました。チームが落ち込んじゃった時も、自分は大声を出して盛り上げていこうと思っていました」


 ◆スターオブザマッチの向來桜子「最後は結構、ばてたので」

 

 松田がPGを追加した後の前半19分、SH山本彩花がラックサイドをスルスルと駆け抜けて、トライを追加した。ヘッドキャップからこぼれる束ねた長髪が秋風に揺れた。1トライを返されたが、前半30分、闘争心の塊、ナンバー8向來桜子が中央に飛び込んだ。地味ながら、FWのサポートプレーもよかった。ゴールも決まり、24-5とリードをひろげた。

 向來は、この試合の『スターオブザマッチ』に選ばれた。一番活躍した選手に贈られる賞である。星空が彩られた盾をもらった。

 向來は試合後、「結構、後ろからの押しもよかったので、いつもよりゲインできたかな」と周囲に感謝した。

 「(勝利に)ホッとしています。日体大はやっぱり、走るラグビーがメインだと思うので、それが最後まで出せたのがよかったと思います。ただ、最後は結構、ばてたので、もっと走れるようにしたいです」

 

 この日は、セットプレーのスクラム、ラインアウトが安定していた。

 選手の声もよく出ていた。疲れが見えた時、グラウンドで誰かが大声を出す。

 「前出るよ、ニッタイ!」

 「がんばれ、フォワード!」

 前半終了間際、SH山本がペナルティーキックから速攻を仕掛け、スピードよく駆け込んできたSO大内田につなぎ、右中間にトライを加えた。自分でゴールも蹴り込み、31-10で前半を折り返した。


 ◆ボーナス点ゲット。樋口主将「とれてよかったで~す」

 

 風下に回った後半は予想通り、相手に圧され始めた。

 交代メンバーを入れる相手に対し、日体大は3人を入れ替えただけだった。体格も相手の方が大きい。そりゃ、疲れるだろう。

 でも、日体大はもう1本はトライを欲しかった。前半のトライ数が日体大4本、相手は2本。3トライ差以上でボーナス点をゲットするためにはあと1本、トライが必要だったのである。で、相手にはトライを許さない。

 激しい攻防がつづく。とくに序盤、日体大はゴールライン前のピンチをよくしのいだ。フッカー根塚智華、右プロップ麻生来海、ロック村瀬加純、ナンバー8向來が接点でからだを張る。束となって守る。フランカーの持田音帆莉、樋口主将がナイスタックル!

 ゴールライン寸前で、持田がジャッカルして窮地を救ってくれた。ありがと。その後も耐える。守る。タックルする。粘って、粘って、後半36分、途中交代出場のプロップ西村澪のナイス!セービングからチャンスが生まれた。

 1年生ロックの八尋瑛が、フランカー持田が、ナンバー8向來が立て続けにタテを突く。ボクシングでいえば、ワン! ツー! スリー!とジャブをかまし、そして強烈な右のストレートだ。快足ウイングの梅津悠月が右ライン際を脱兎のごとく駆け抜け、右隅に飛び込んだ。これで3トライ差だ。やった~! ボーナスポイントゲットである。これは大きい。

 樋口主将が漏らした。

 「ボーナス点、とれて勝てて、よかったで~す」

 前述の通り、この日のスターオブザマッチは向來。で、チーム表彰のゴールドシールが、1年生の八尋と、4年生の大内田だった。でも、みんな、がんばってくれた。部長から、みんなに、“頑張ったで賞”を出したいくらいである。


 ◆古賀監督「自信が持てる試合が初めてできた」

 

 今年は夏合宿以降、チーム状態は苦しんでいた。

 古賀監督は「ほんと、ここまでが大変でした」と打ち明ける。

 「練習試合はぜんぶ、ぼろ負けで…。(ケガで)人はいねえわ、ディフェンスできねえわ、勝てねえわ、で、ぼろっぼろっだったんです。苦しかったですよね」

 ひと呼吸をおき、「ようやく」と言葉を足した。

 「自信が持てる試合が初めてできました。よくないところもありましたけど、いいところが多かったんで」

 ここ数週間はディフェンスの修正をやってきた。結果、試合ではディフェンスでしっかりと前に出ることができた。アタックのポゼッションも継続できるようになった。

 それにしても、日体大はよく走りますね、と声をかけると、古賀監督は「それしかないんで。重さ(体重)がない分」と苦笑いをつくった。

 

 最後に聞いた。

 今年はどんな新たな物語を紡ぎますか?

 古賀監督はプッと噴き出した。「とりあえず」と言った。

 「“とりあえず”ですよ、無事に完走したい。とてもじゃないですけれど、楽観的な事は言えません。正直、コツコツ、目の前のことを精一杯やっていくしかありません」

 はてさて、どんな物語になるのか。どんな色合いの風景が広がっているのか。ふと選手たちの歓喜の輪をみると、その周りを、古賀監督の愛犬、ダックスフンドの「リュウ」ちゃんが走り回っていた。

 大リーグのワールドシリーズを制したドジャースの大谷翔平の愛犬、デコピンのごとく、飼い主のチームの勝利を祝っているのだった。


                       (筆:松瀬学)

 
 

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