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まっちゃん部長日記

まっちゃん部長日記⑦2023年7月4日


 ◆個人の成長とチームの進化

 

 これぞチームプレーの輝きか。7人制女子ラグビーの年間王者を決めるシリーズ最終第4戦・花園大会最終日が2日行われ、日本体育大学が3位と健闘し、総合2位を決めた。学生ならではの全力プレーから、「個人の成長」と「チームの進化」が見てとれた。

 炎天下の東大阪・花園ラグビー場。陽射しが傾く中での表彰式では選手たちに笑顔がひろがった。ノーサイド。互いの健闘をたたえる。日体大は記念撮影の際、みんなでこう叫び、人差し指を立てた。

 「ユニコーンズ、ナンバーワン!」

 ユニコーンズとは日体大の愛称である。ユニコーンは伝説の一角獣を意味し、唯一無二の存在を指す。確かに優勝はできなかったけれど、ラグビーらしいチームの完成度としてはナンバーワンだったかもしれない。



 ◆新野主将「めちゃくちゃ楽しかった」


 日体大の選手たちの顔には、自分たちのラグビーをやり切ったとの満足感が漂っていた。主将の新野由里菜は「めちゃくちゃ楽しかったです」と笑った。

 「持ち味の走りとつなぎ、組織ディフェンスを体現できました。自分たちの中で、かなり成長できたシリーズでした。みんな仲良し、信頼関係もバッチリ。“自分たちはやれるんだ”という自信がつきました」

 最後の3位決定戦は死闘となった。相手は、昨年の総合優勝チーム、東京山九フェニックス。米国代表で鳴らしたエースのニア・トリバーの破壊力に3トライを許し、後半中盤で7点のビハインドを背負った。

 この試合、日体大は攻守の要、OGの堤ほのかをけがで欠いていた。でも、全員がそのアナを埋め、つなぎにつなぎ、チームとして守った。とくに途中出場の梅津悠月の猛タックルはチームを勇気づけた。総合力勝負である。窮地に立ち、チーム間の信頼が威力を発揮する。

 ラスト2分、左右につなぎ、最後は新野主将が真ん中に飛び込んだ。トライ。息を切らしながらも、同点ゴールキックを慎重に蹴り込んだ。試合は、5分ピリオドを繰り返す延長戦にもつれ込んだ。どちらかがポイントを入れたところで勝敗が決する「サドンデス方式」だ。


 ◆死闘の3位決定戦、総力戦


 もう総力戦だった。メンバー交代でリザーブがグラウンドに入っている。それでも、戦力は落ちない。心のこもった連係プレーは乱れない。日体大はディフェンスに回っても、途中出場の高橋沙羅らが面となって圧を相手にかけた。暑いから、汗でボールが滑る。ノックオンを誘った。アドバンテージ! このボールをすかさず拾って、かまわず攻めた。

 大内田夏月がタックルを受けながら左手でオフロードパスし、手をたたいて呼んだ途中交代の樋口真央がもらって走る。激しいタックルを受ける。後ろからフォローした東あかりがボールをもらって、タックルを振り切って、インゴールに飛び込んだ。決勝トライだ。フォローの位置取りが絶妙だった。

 24-19でノーサイド。ベンチから堤ら他の選手も駆け寄り、歓喜の輪ができた。いつも厳しい顔の古賀千尋監督も涙をこぼした。うれしくて、うれしくて。



 ◆古賀監督「バンザイ」


 その時の心境を聞けば、古賀監督は声を弾ませた。「バンザイッでした」。白色のサファリハットの下の顔はもう、くしゃくしゃだ。

 「観客席に向かって、ワーッと叫んだと思います。最後はリザーブも全員入れて。その子たちが活躍してくれました。ほのか(堤)がけがしていたこともあって、みんな必死で。最後、チームとしてやれました。それがうれしくて、もう泣いちゃった」

 いいチームである。外国人はひとりもいない。だから、よりコミュニケーションを大事にする。互いを信頼する。同じ絵をみる。猛練習ゆえの「あ・うん」の呼吸でパスをつなぐ。おそらく、プレーしている選手も楽しいだろう。

 準決勝は4大会連続で完全優勝を遂げた「ながとブルーエンジェルス」と対戦した。主軸の外国人選手にトライを連取されて、0-24で完敗した。ショックかと思いきや、古賀監督によると、試合後のロッカールームでは爆笑が渦巻いていたそうだ。

 「大敗したら普通、お葬式みたいに落ち込むじゃないですか。でも、このチームはならない。敗戦の映像をレビューしながら、みんな、大爆笑していました。明るい。悲壮感がないんです。落ち込んだってしょうがないじゃんって」


 ◆試合テーマは「笑って楽しむ」


 その準決勝から約2時間後。3位決定戦の試合テーマは「最後だから、笑って楽しむ」だった。みんなでエンジョイだ!

 表彰式後の通路で向來桜子と大内田は笑って、声をそろえた。

 「みんな、めちゃ仲がいい。みんな、互いを大好きなんです」

 選手の満足感は、なにより「自分の成長」があればこそ。「チームの進化」を実感できてこそだろう。昨年は年間総合5位。上位4チームには一度も勝てなかった。それが、ことしは、準優勝、準優勝、準優勝、そして3位だった。もちろん、対戦カードの運・不運はあるだろうが、ながと以外のチームには負けなかった。

 それは、チームの底上げ、選手層の厚みが増したからだ。ふだんの古賀監督の熱血指導、練習の充実があればこそ、だろう。

 しかも、みんな「ひたむき」だから、ラグビーの美徳のような何かを、日体大は表現できたのである。見る者の心の支持をつかんだのだ。これは良きカルチャーだろう。



 ◆エース松田、次はパリ五輪


 そういえば、表彰式の総合優勝・2位の合同記念撮影でリードの掛け声をかけたのは中心にいた日体大のエース、松田凛日だった。

 もう日本女子ラグビー界の「太陽」のような存在だ。シリーズの印象を聞けば、こう笑顔で即答した。

 「楽しかったです」

 ひと呼吸おき、こう言葉を足した。

 「いや、楽しかったけれど、優勝できなくて悔しさもありました。楽しいと悔しいが半々かな。でも今までで一番、楽しかったのは間違いありません」

 自分の成長は?

 「判断の部分です。自分が勝負を仕掛けるべきなのか、ボールを離すべきなのか。自分の判断が正しいことが増えたのかなと思います」

 新たな目標は、日本代表としての来年のパリ五輪出場である。秋には五輪予選を控えている。本番はこれから、である。

 「はい、そちらも、楽しんでやりたいです」

 次のターゲットは選手それぞれながら、ひたむきな日体大の女子選手たちの成長はまだまだ、つづくのである。(松瀬学=スポナビから転載)

 
 

まっちゃん部長日記⑥2023年6月5日


 これぞ学生クラブの美徳か。女子7人制ラグビーの日体大ユニコーンズがひたむきプレーで、スタンドを沸かせ続けた。最後まであきらめず、結束してチャレンジする。誰もがチームのためにからだを張った。決勝戦。劇的な幕切れに少なくない数の人々の感涙をも誘った。こちらも、ちょっぴり泣けてきた。


 大健闘の準優勝。それでも、教育実習の合間、大会初日朝に栃木から駆け付けた日本代表のエース、4年生の松田凛日(國學院栃木高出身)は小声を絞り出した。

 「悔し過ぎるなあ」

 古賀千尋監督はこうだ。トレードマークの濃紺の帽子の下の顔を少しゆがめて。

 「悔しい。本気で勝ちにいったんで、悔しいです」


 素朴な疑問。なぜ日体大のひたむきなプレーは見る人の魂を揺さぶるのか。監督は少し考え、こう続けた。

 「私は、“組織は個に勝る”とずっと言ってきています。(日体大が)どこよりもチームだからじゃないですか」


 ◆ロスタイム、執念のトライ


 4日の東京・秩父宮ラグビー場。前日と違って、朝から青空が広がった。日中の最高気温が27度。初夏を思わせる日差しの中、日体大が快進撃をつづけた。数少ない伝統的な横縞ジャージ、スカイブルーと紺色のそれが陽射しにキラキラ輝く。社会人の強豪クラブとは違い、外国人選手はひとりもいない。ただ結束があった。相手に挑みかかる気概があった。


 国内最高峰の『太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ』第2戦、東京大会。メインスタンドは約3千人の観客で埋まった。日体大は第1戦に続き、またも決勝に進出し、第1戦と同じく「ながとブルーエンジェルス」と対峙した。


 試合終了のホーンが鳴る。次がラストプレーで、ながとボールのスクラムとなった。日体大の7点(ワントライ、ワンゴール)のビハインド。万事休ス。おおきなため息がスタンドから漏れた。


 でも、日体大はあきらめない。このスクラムをぐいと押し込んだ。凄まじいプレッシャーで、大会MVPとなった南アフリカ代表のナディーン・ルイスのハンドリングミスを誘い、ターンオーバー(攻守逆転)とした。


 日体大が攻める。7人一体となって、攻めに攻めた。つなぐ。スペースを突く。タックルを受けると、素早く、激しい寄りでボールを生かす。回す。左から右へ、右から左へ、アングルチェンジを絡めて攻め続けた。もう執念だ。


 相手の反則を誘発する。一度、二度。その都度、すぐにアタックする。スタンドのファンは日体大に声援と拍手を送る。「ニッタイ! ニッタイ!」。ラックの右サイドを向來桜子が小刻みなステップで駆け抜け、ゴール直前までボールを運んだ。二つ目のラックの左サイドを主将の新野由里菜が突き、右中間に飛び込んだ。


 トライだ。新野も向來も両手を突き上げた。ともに顔はくしゃくしゃだ。電光掲示板の数字は試合時間の後半7分を大幅に超え、「9:10」だった。ゴールが決まれば、同点となる。延長にもつれ込む。


 ◆無情のゴール失敗、駆け寄るチームメイト


 しかし、簡単そうに映るが、実は中央右寄りのドロップゴールは右足キッカーには意外に蹴りづらい。案の定、新野が蹴り込んだドロップゴールは無情にも左ポストに当たって外れた。22-24のノーサイド。あと一息だった。


 新野主将は両手で顔を覆い、そのまま膝まづいて泣き崩れた。給水係が、そして東あかりがすぐに駆け寄り、他の選手も励ましに次々に集まった。いいチームだな。新野主将の述懐。

 「ああ、“やっちゃった”って思いました」

 表彰式後、もう涙は乾いている。主将の言葉には悔しさと満足感が混じる。

 「まあ、前回(熊谷大会)よりは自分たちの準備したことは出せました。ドロップゴールはもう、練習するしかありません。次に切り替えます」


 学生のプライドとは。

 「チャレンジすることですか。いつも、チャレンジャーということを肝に銘じています」

 再び、松田。

 「点差以上に力の差を感じました。例えば、ブレイクダウンのところだったり、接点のところだったり。まだまだ、差はあるなあって。いいファイトではなく、自分たちはやっぱり優勝したいので。次はしっかり準備して試合に臨みたいと思います」



 ◆スーパー大学生たちの誇り


 このシリーズの第1戦の熊谷大会の決勝戦(5月21日)では、日体大はながとブルーエンジェルスに0-31で完敗していた。確かに松田が欠場していことはある。だが、とくにキックオフのレシーブ(7人制ラグビーではトライを取ったチームのキックで再開される)でやられた。反撃の糸口をつかめなかった。


 だから、この2週間、キックオフのレシーブを徹底して練習してきた。男子選手にも手伝ってもらった。その効果だろう。布陣が安定し、向來らがナイスキャッチを重ね、何度も逆襲に転じたのだった。


 日体大のキックオフから先制トライを奪われたが、前回決勝のように連続トライは許さなかった。松田の60メートル独走トライ、敵陣ゴール前の相手スペースを突いた大内田夏月の連続トライで12-7と一時は逆転した。


 松田は言った。

 「前回はキックオフの部分で“ながとさん”にやられていました。でも、今日は修正して、試合に臨めたのかな、と思います」


 攻守に活躍した堤ほの花(ディックソリューションエンジニアリング)もまた、チームの成長を実感する。25歳のOG。日本代表として、いぶし銀の光を放つ。言葉に充実感がにじむ。

 「熊谷では悔しい気持ちが強かったんですけど、今日はやり切ったなと思いました」

 学生チームのプライドを聞けば、「私は社会人のOG枠ですから」と笑った。

 「でも、気持ちは大学生。みんなと回復力がちょっと違いますけど。みんな、しっかり自分のやるべきことをやり切って、ちゃんと試合で出してくれます。スーパー大学生たちだなと思います。ほんと、誇らしいです」



 ◆学生のプライド


 日本ラグビー協会の宮﨑善幸・女子セブンズ日本代表ナショナルチームディレクターは、「日体大の強さは“学生のプライド”」と表現した。

 「相手に外国人がいようがいまいが、自分たちのラグビーで勝つといった強い気持ちを感じます。外国人がいなくても言い訳なしで勝負しているんです。どのチームも、日体大と戦うのが一番嫌なんじゃないでしょうか」


 なるほど、激闘となった準決勝の東京山九フェニックスも、決勝のながとブルーエンジェルスも、組織ディフェンスで強力外国人を封じ込んでいった。ひとりでダメなら、二人のダブルタックル、三人のトリプルタックルで。

 倒れたら、すぐに立ち上がる。スペースをつぶす。そのためには相手を上回る運動量が求められる。タフな気持ちも。そこには厳しい毎日の鍛錬の跡がみえるのだった。



 ◆次こそ、ユニコーンズ、ナンバーワン!


 試合後の表彰式。

 準優勝のカップをもらい、日体大選手は記念撮影では人差し指を突き上げて声をあげた。

 「次こそ、ユニコーンズ、ナンバーワン!」

 学生ならではの覇気が風にのる。笑顔がはじける。古賀監督はこう、しみじみと漏らした。

 「学生にほんと、“ありがとう”ですよ」


 グラウンドからの帰り際、4年生の松田と2年生の向来、髙橋夏未の三人が並んでスタンド下のコンコースを歩く。

 学生のプライド? いや日体大のプライド?を聞けば、なんだろう、と笑い合った。

 松田は言った。

 「負けん気」

 向來は笑いながら右手を頭にのせた。

 「ここに角が生えていることかな」

 日体大の愛称ユニコーンズのユニコーンは伝説上の動物「一角獣」である。額に魔力を持つ一本の角が生えているとされている。

 向來は言った。

 「私は、2年生だからまだ2本」

 髙橋も言葉を足した。

 「私も、2年生だから2本。4年生は4本」

 三人が口をそろえた。

 「次こそ、ユニコーンズ、ナンバーワン!」

 このポジティブさと明るさがいい。笑い声がコンコースに響きわたった。

(松瀬学=スポナビから転載)



 
 

まっちゃん部長日記⑤2023年5月21日


 アツいぞ、クマガヤなのです。日中の最高気温が30度突破。夏日となった日曜日の5月21日、日体大ユニコーンズが暑さに負けない“熱量”を発揮し、2019年以来の決勝の舞台にコマを進めました。拍手です。


 勝負の『太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ』第1戦、熊谷大会です。暑さにも体力を奪われたのでしょう、日体大は決勝戦で力尽きました。強力な外国人選手たちを主軸とする「ながとブルーエンジェルス」にやられました。悔しいかな、選手たちは体力の限界を超えていたのでしょう。

 0―31の試合終了。重い足取りでバックスタンドの前に整列したスカイブルーと紺色の日体大選手たちの横縞ジャージィの背中が疲労と憂いを帯びていました。右端の松田奈菜実選手は松葉づえ姿です。白い包帯が目に痛々しくて。



 健闘の準優勝です。表彰式あとの記念撮影では、みんなでひと指し指を立てて、こう声をあげました。


 「ユニコーンズ、次は、ナンバーワン!」



 スタジアムの通路で、この日活躍した新野(しんの)由里菜主将は、「悔しいです」と声を絞り出しました。「(決勝では)自分たちのラグビーを全然、やれませんでした。次は勝ちます」

 ただ収穫は大きかったのではないでしょうか。なんといっても、決勝の風景を見ることができたのです。そこまでの日体大のラグビーは“学生らしく”、ひたむきなものでした。みんな、からだを張りました。負けん気というか、意地というか、見る者の心の支持をつかんだのです。日体大ラグビーの美徳の輝きでした。



 朝6時に東京ディズニーランドそばの自宅を車で出ました。土曜日は、リーグワンの決勝取材で熊谷には行けませんでした。高速道路ではワクワク気分でスピードをあげました(スピード違反はしていません。念の為)。「オ~、サンデー、サンシャイン♪」

 ざっと2時間。熊谷ラグビー場の周りにピンクのつつじが咲き誇っています。朝の風がほおをなでます。周りのグラウンドでは、タグラグビー大会が開かれるそうで、子どもたちの笑顔があふれていました。かわいいフレンチブルも散歩していました。



 サブグラウンドに行けば、いた、いた、日体大ユニコーンズのみんなが。濃紺のTシャツの背中には白字で「情熱」。“死のグループ”を3戦全勝で1位通過した自信でしょうか、ほどよい緊張感の中、笑顔もあふれています。

 誰か選手の声が聞こえました。「まあちゃん日記…」と。僕はつい大声をあげたのです。「ちゃう、ちゃう、ホームページに書いているのは、まっちゃん日記ですよ。まあちゃんではなく、まっちゃん」と。



 決勝トーナメント(1~8位決定戦)の初戦は、横河武蔵野Artemi―Starsが相手でした。前半はヒヤヒヤしましたけれど、前半終了のホーンが鳴ったあと、「負けるのが一番きらい!」と断言する向來(こうらい)桜子選手がPKからの速攻で同点トライを挙げました。12-12で折り返しです。

 後半は、日体大が主導権を握りました。向來選手が約60メートルを走り切り、またまたトライ。“リンカスペシャル”2連発と松田凛日(りんか)選手が連続トライを加えます。松田奈菜実選手、大内田夏月(なつき)選手もトライし、終わってみれば、47―12の圧勝でした。


 さあ、準決勝です。相手が昨年の総合優勝の東京山九フェニックスです。元米国代表のニア・トリバーら強力な外国人を擁する難敵です。気力充実。試合の入りがばっちりでした。

 開始直後、向來選手のオフロードパスから松田凛日選手が大きなストライドで走り切り、右隅に先制トライを挙げました。

 ディフェンスがいい。堤ほの花選手のタックルが決まり、笑顔がはじけます。髙橋夏未選手がボールを動かします。4分。新野主将の絶妙のキックを、追走した松田凛日選手がさらに蹴り、堤選手がインゴールに押さえました。ブラボー! 12―0と先行しました。

 前半終了間際、トライを返されましたが、後半1分30秒、松田凛日選手がラックの左サイドに持ち出して、ハンドオフを決め、中央に飛び込みました。これまたブラボー!


 ここから日体大は粘りました。1トライを返され、5点差に詰め寄られました。試合終了間際、ピンチが続きます。日体大から見ての右隅の攻防です。ゴールライン直前、東あかり選手が猛然とタックルします。でも、相手に飛び込まれたかに見えました。Oh、No! 同点トライを奪われたか?

 レフリーの笛が鳴りました。トライか。いやタックルされた相手のダブルモーションでのペナルティーです。東さん、ブラボー、ブラボー、もういっちょブラボーです。19―14の試合終了。日体大がひとつになっての勝利です。

 実況放送が場内に流れました。元日本代表エースの鈴木彩香さんの高い声がスタンドに響きわたりました。「劇的な勝利で~す」

 その後、通路でばったり会った彩香さんに日体大の美徳を聞きました。「粘り強さですかね」と言い、こう言葉を足してくれました。

 「“上手い下手い”じゃない次元のラグビーをいつもしています。それって、一番強くないですか。ラグビーって上手い下手いじゃないんだなって思わせてくれるんです。日体大は魂がベースなんですよ」


 で、決勝は冒頭に書いた通りです。タイトなゲームをしのいで勝ち上がった日体大の選手には体力が残っていませんでした。外国人選手が並ぶ「ながとブルーエンジェルス」とは選手個々の体力も実力も差がありました。選手層も。

 しかも日体大の主軸の松田凛日選手はコンディション不良で大事をとって出場できませんでした。日体大選手は死力を振り絞りました。でも…。唯一のトライチャンスだった前半終盤。東選手が40メートルほど独走しました。残念です。フォロワーが誰もいませんでした。


 余談をいえば。

 この日、僕はリュックのポケットにピカピカ金色の金メダルチョコレートを入れていました。日体大が優勝したら、古賀千尋監督にプレゼントしようと考えていたのです。

 で、忘れていました。ペンをポケットから出そうとしたら、金メダルチョコレートが暑さでドロドロに溶けていたのです。ははは。

 チョコレートのように真っ黒に日焼けした顔で笑うしかありませんでした。


 戦いすんで日が暮れて。

 西日が差し込むラグビー場の通路で、古賀監督はぽつりと漏らしました。「選手に感謝です」。言葉に滋味があふれます。

 「もう、からだを張って限界まで戦ってくれました。限界の、限界の、限界まで、やってくれたんです。感謝しかありません」

 隣を通り過ぎる選手の目元が赤くなっていました。泣いたのでしょうか。泣かないで。

 僕は大声で言葉をかけました。

 ナイス・ファイト! 夢膨らむ第一歩です。感動をありがとう、と。(松瀬学)


 
 

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